便潜血検査で陽性の方へ
2019年に日本で新たに大腸がんと診断された人数は、男性が約8.6万人、女性が約6.6万人であり増加傾向にあります。臓器別にみると、大腸がんは男女共に2番目に多いがんあり、年齢別の大腸がんの割合は、40歳付近から増加し始め、年齢が高くなるほど高くなります。
便潜血検査とは
便潜血検査は大腸がんのスクリーニング(病気の疑いがある人を見つけ出す)検査として健康診断などで行われています。大腸にできたがんなどから出血することがあり、便の中に血液の反応があるかどうかを調べる検査です。
*出血があるからといって必ずしもがんがあるということではありませんが、精密検査が必要となります。
便潜血検査には、化学的方法と免疫学的方法があります。
化学的方法:古くから用いられてきた方法です。赤血球中のヘムが持つペルオキシダーゼ様作用を検出しますが肉や魚などに含まれる血液や鉄剤、緑黄色野菜にも反応し陽性となってしまい、偽陽性(実際は陰性であるのに陽性となること)となる場合があります。またビタミンCなどの服用によって偽陰性(実際は陽性であるのに陰性となること)となる場合もあり、便を長時間放置すると検出感度が低下することが報告されています。
免疫学的方法:化学的方法の欠点を補うために1980年代に日本で開発された方法です。ヒトヘモグロビンに対する抗体を用いて潜血の有無を検出する方法で、人間の血液に特異的に反応し肉や魚の血液などには反応しません。偽陽性が少なく、検出感度の高い検査法で食事制限も必要としません。なお胃酸や腸液などの消化液によってヘモグロビンが変性するため、食道や胃、十二指腸などの上部消化管からの出血では陽性にならず、大腸からの出血のみを検出します。
現在の便潜血検査は、免疫学的方法が広く普及しています。
便潜血検査の陽性である場合の大腸がんの可能性は
集団検診の報告では、便潜血検査(免疫学的方法)の陽性率は5%前後とされています。陽性となった方の内、2-3%が下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)によって大腸がんと診断され、大腸がんの発見率は0.10-0.15%です。
大腸がんの約30%以上が便潜血検査をきっかけに発見されるとされており、毎年検査を受けることで大腸がんによる死亡リスクは60-70%減少するとされています。
便潜血検査の陽性となる病気は
便潜血検査が陽性だからといって必ずしも大腸がんというわけではありません。便潜血が陽性となる疾患は、大腸がんの他、大腸ポリープ、痔核、潰瘍性大腸炎、虚血性大腸炎などです。中でも頻度が多いのは、痔、大腸ポリープです。
便潜血検査が陽性となった場合は
また大腸がんが存在していても便潜血検査が陰性である場合もありますので、40歳以上の方で一度も大腸カメラを受けたことがない方や便秘が続く、便が細くなったという方は一度ご相談下さい。