高尿酸血症、痛風
高尿酸血症とは
高尿酸血症は血液中の尿酸の濃度が異常に高まり、痛風発作の原因となります。
尿酸とは細胞内の核に含まれるプリン体が分解される際に生じる老廃物のことで過剰に産生されるか尿中への排泄力が低下することによってバランスが崩れることで、血中の濃度が異常に高まります。
*プリン体は体内で80-90%が作られるため、極端に制限する必要はありませんがビールなどのアルコールを日常的に摂取される方や魚卵、肉、魚などを多く摂取される方は注意が必要となります。
高尿酸血症は男女問わず血清尿酸値が7.0mg/dLを超える状態と定義されています。
日本では食生活の欧米化によって年々増加しており、2010年頃には成人男性の20-25%に高尿酸血症が認められています。
全人口の男性で20%、女性で5%との報告があり、圧倒的に男性に多い病気です。これは女性ホルモンが尿酸の代謝に関係しているためと言われていますが、女性に起こらないわけではありません。
また高尿酸血症の患者さんのおよそ80%に高血圧や肥満、耐糖能異常(空腹時の血糖が正常値と異常値の間にある状態)などの生活習慣病に合併し、複数の生活習慣病に重複してかかっている方も多くいらっしゃいます。
高尿酸血症の原因
尿酸の産生亢進をきたす核酸代謝関連酵素の遺伝子異常(ヒポキサンチンーグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)欠損やホスホリボシルピロリン酸(PRPP)合成酵素過剰症)と輸送体である尿酸トランスポーターの機能低下型遺伝子変異などの単一遺伝子異常と多遺伝子異常などが示唆されていますが、食事、飲酒、運動などの生活習慣も原因となっています。
高尿酸血症の分類
高尿酸血症は①体内で尿酸を作りすぎるタイプ(尿酸産生過剰型)、②尿酸の排泄が上手くいかないタイプ(尿酸排泄低下型)、③(両者の)混合型の大きく3つに分類されます。
また尿酸は約2/3が腎臓から排泄され、残りのほとんどが腸から排泄されることが分かっており、最近では腸からの排泄がうまくいかないタイプの腎外排泄低下型の存在も提唱されています。
高尿酸血症の症状
高尿酸血症の状態が続くと、体内の尿酸プールが増加し、関節や腎尿路系に尿酸一ナトリウム(MSU)が結晶として析出(せきしゅつ:固体が分離してでてくること)します。関節に析出した尿酸塩結晶を白血球が貪食し炎症を惹起するサイトカインが分泌され生じる関節炎のことを痛風関節炎(いわゆる痛風、痛風発作)と呼び、足の関節、特に足の親指の付け根に最も多く認め激痛となります。その他足首や膝、手首などの四肢の関節にも生じるころがあります。
なおこの痛風という名称ですが、風が吹いても痛いということが語源となっております。
この①激痛のある関節炎に加え、②痛風結節、③腎機能障害が高尿酸血症の3大症状です。
痛風結節とは、尿酸塩結晶が関節周囲の皮膚の下にたまって出来るかたまりのことで、コブの様な見た目となります。通常痛みはないとされていますが、同部位に炎症が起こり痛みを伴うこともあります。手の指やかかと、アキレス腱、肘などに好発し、関節を動かしにくくなります。放置をすると、最終的に関節の変形や変形性関節症を生じることもあり、治療(尿酸値を低くする)を行うことで結節の分解を促します。
高尿酸血症、痛風の検査と診断
血液検査で尿酸の値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。
また痛風の確定診断には、痛風発作が起きている際に関節の中の尿酸塩結晶の存在を証明することとなりますが、一般的には尿酸値が7.0mg/dL以上で痛風に特徴的な症状がれば診断は可能です。
高尿酸血症、痛風の治療
まず症状出現時、つまり痛風による痛みに対しては痛みを和らげる薬物治療を行います。
薬の種類は以下の3種類が存在しますが、症状が強い場合には2種類の薬を併用して使用する場合もあります。
また薬物治療以外には、痛む場所の負担を避けること、痛む場所を冷やすこと、禁酒などがあります。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
- コルヒチン
- 副腎皮質ステロイド
また高尿酸血症自体の治療薬には①尿酸の排泄量を増やす尿酸排泄促進薬、②尿酸を作る働きを抑える尿酸生成抑制薬の2種類があり、病態に沿って選択されます。高尿酸血症は産生過剰型、排泄低下型、混合型の3種類に分類されますが、産生過剰型には尿酸生成抑制薬、排泄低下型には尿酸排泄促進薬が用いられます。
*ただし腎機能が低下している場合には尿酸排泄促進薬で十分な治療効果が期待出来ず、尿酸生成抑制薬が第一選択薬となります。
上の図は高尿酸血症の治療方針を図示したものになりますが、薬物治療の上に生活指導があることに注目していただければと思います。この生活指導には、適度な有酸素運動やストレスの解消、そしてアルコール摂取の制限などが含まれていますが、肥満の解消、食事療法なども含まれています。
当院ではクリニックには珍しく、管理栄養士が常勤として勤務しており、「栄養相談」という形で食事療法のアドバイスを行うことが可能です。予約制ではありますが、1回30分程度で行うことが出来ますので診察の待ち時間などを利用することが出来ますので、医師やスタッフにお気軽にご相談下さい。