漢方薬のお話 おなかの症状編①

わだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

今回は漢方薬についてお話させていただきます。

私たちが処方し、皆さまに飲んでいただいている薬は主に西洋薬と今回お話する漢方薬に分けられます。

西洋薬が人工的に化学合成された物質で、多くは単一つまり一つの成分で構成されていることから、一つの病気や症状に効果を発揮するのに対して、漢方薬は2種類以上の天然の生薬が使用されており、多くの成分を含んでおり原因がはっきりしない症状を改善するのに優れています。

どちらが良い、悪いではなく患者さまそれぞれの症状や病気によって、時には西洋薬から漢方薬、また漢方薬から西洋薬に切り替えて症状の改善に努めていきます。もちろん西洋薬と漢方薬を一緒に飲んでいただくケースもございます。

今回は私の専門である消化器内科、つまりおなかの症状に対する漢方薬についてご紹介いたします。

まず食欲不振に対する漢方薬ですが主に以下の3種類を用います。

  1. 六君子湯(りっくんしとう・ツムラの43番)
  2. 補中益気湯(ほちゅうえっきとう・ツムラの41番)
  3. 人参養栄湯(にんじんようえいとう・ツムラの108番)

六君子湯は、食欲がなく食事摂取量も少なく、もともと痩せ型もしくは痩せ傾向にある方が適応となります。

胃もたれがあり食事摂取量が減っている患者さんには六君子湯の処方を検討します

補中益気湯は、食欲はないが食べられる方に用いられる場合が多いです。また味がせず食欲が出ないと場合にも適応となりますので、味覚障害で体重減少傾向の方にも用いられます。

食べられるが美味しくない患者さんには補中益気湯の処方を検討します

人参養栄湯は、肺の病気のある方や不眠症の方に用いられる場合が多いです。また嗅覚障害や認知症などの高齢者の方に効果があったとの報告もあります。

→肺疾患や不眠のある高齢者には人参養栄湯の処方を検討します

続いて機能性ディスペプシア、逆流性食道炎の方に対する処方です。

逆流性食道炎は名前を聞いたことのある方も多いと思いますが、機能性ディスペプシアとは「症状の原因となる明らかな異常がないのに、慢性的にみぞおちの痛み(心窩部痛)や胃もたれなどの症状を呈する病気」です。

主に以下の3種類を用います。

  1. 六君子湯(りっくんしとう・ツムラの43番)
  2. 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう・ツムラの16番)
  3. 人参湯(にんじんとう・ツムラの32番)

六君子湯は、先ほども登場しましたが逆流性食道炎の治療の用いられることもあります。実際、逆流性食道炎の治療に用いることのある胃薬であるラベプラゾールの効果の乏しい方に、六君子湯を追加することでラベプラゾールを倍量で投与するのと同等の効果があったとの報告もあります。

半夏厚朴湯は喉のつかえ感や胸部不快感で抑うつ傾向にある方に用いる場合が多いです。

人参湯は、痩せ型でみぞおちにつかえ感があり、冷え症・軟便傾向の方に用いられます。

以上、今回はおなかの症状に対する漢方薬についてご紹介させていただきました。

もちろん今回紹介させていただいた漢方薬が全てではありません。また患者さんそれぞれの病気、症状に応じて薬剤の選択をしていきますので、今回書いた適応が全てではないことはご理解いただければと思います。

なお今回はpart1で次回以降は便秘や下痢などに対する漢方薬についてもご紹介させていただきたいと思いますので引き続きよろしくお願いします。

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