ピロリ菌って何回も感染するの?
わだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。
今回はピロリ菌についての話題です。ピロリ菌については公式ホームページで詳しく説明しておりますので、お時間のある方は目を通していただければ幸いです。
外来診療を行なっていると、患者様からこういう質問を受けることが時々あります。
「2,3年前に他の病院でピロリ菌の治療をしたんだけど、今回の健康診断でピロリ菌が陽性で精密検査を受けてと言われたんだよね。もう1回感染したってこと?」
結論から言うと、もう1回感染した(再感染)可能性は低いと思います。
ピロリ菌の再感染率は1-2%と報告されていますが、そのほとんどがピロリ菌の除菌治療後の除菌判定が”偽陰性(本来は陽性であるのに、誤って陰性と判定されること)”のためと言われているからです。もっとわかりやすく言うと、除菌治療が失敗であったにも関わらず、誤って成功と判断されていたということです。
この除菌判定が偽陰性となる理由としましては、①除菌判定が早すぎた、②除菌判定時の飲み薬の関係が言われています。
まず除菌判定が早すぎたについて説明します。ピロリ菌の除菌治療は通常1週間薬を飲んでいただくのですが、内服終了後、除菌判定までに少なくとも2ヶ月間開ける必要があると言われています。
続いて除菌判定時の飲み薬の関係について説明します。これはPPI(プロトンポンプ阻害剤)やPCAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)という逆流性食道炎などの治療に用いられる種類の胃薬を飲んでいる場合に注意が必要です。これらの薬がピロリ菌に対して静菌作用(ピロリ菌の感染密度を低下させる)を持つため偽陰性となることがあります。そのため除菌判定までに少なくとも2週間の休薬が必要と言われています。
- パリエット(ラベプラゾール)
- タケプロン(ランソプラゾール)
- オメプラゾール
- ネキシウム
- タケキャブ
上記の薬を飲んでいらっしゃる方は、診察の際にお伝えいただければと思います。
その他抗血小板剤との合剤であるタケルダ配合錠(タケプロンが含まれています)やキャブピリン配合錠(タケキャブが含まれています)も同様です。
*おくすり手帳を持参いただければ間違いないと思います。
また健診でのピロリ菌検査は血清の抗ヘリコバクターピロリIgG抗体という項目を測定することが多いのも冒頭の様なケースを起こす理由です。この抗体は除菌成功後徐々に低下し最終的に陰性となりますが、一部には数年経過しても陽性のまま推移する方もいらっしゃいます。
つまり今回のケースの方では①除菌判定が偽陰性、②除菌治療は成功しているが、血清抗体がまだ陰性化していない2つの可能性が考えられます。
この場合正確な判定を行うために当院で尿素呼気試験を行わせていただく場合もあります。
最後に皆さまに大切なことをお伝えします。ピロリ菌の除菌治療を行うことで胃がんのリスクが3分の1まで低下するという報告があります。ただしリスクがゼロになるわけではなく、最近ではピロリ菌の除菌後に発見される「除菌後発見胃がん」が増えており、除菌後10年以上経過して発見された報告もあります。
この胃がんを早期発見、治療を行うためにも、ピロリ菌を除菌された方も年1回の定期的な胃カメラ検査が必要ですのでぜひご検討いただければと思います
当院では「経鼻上部消化管内視鏡検査(鼻から入れる胃カメラ)」を採用しており、苦痛の少ない内視鏡検査を心掛けておりますので、お気軽にご相談下さい。