痛風になりやすい食事ってなに?

大分県大分市のわだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

本日は痛風と食事やアルコールとの関係性を中心にお話ししたいと思います。

痛風の原因とは?

痛風は、まるで関節に無数の小さな針が刺さったような激痛が走る病気ですが、一体何が原因で起こるのでしょうか? 痛風の発症には、いくつかの要因が複雑に絡み合っていると考えられています。ここでは、痛風の主な原因として、高尿酸血症との関係、食事の影響、遺伝的要因の3つについて詳しく解説していきます。

高尿酸血症の関与

私たちの身体は、細胞が新しく生まれ変わる新陳代謝を常に繰り返しています。この新陳代謝の過程で、「プリン体」という物質が分解されて「尿酸」が作られます。尿酸は通常、腎臓でろ過され、尿として体外に排出されます。しかし、プリン体の多い食事を摂りすぎたり、体質的に尿酸が作られやすかったり、腎臓の働きが弱っていたりすると、血液中の尿酸値が高くなってしまうことがあります。この状態を高尿酸血症と呼びます。

高尿酸血症は、自覚症状がない場合も多いですが、放置すると痛風発作のリスクが高まるだけでなく、腎臓病や動脈硬化などの合併症を引き起こす可能性もあります。健康診断などで尿酸値が高いと指摘されたら、放置せずに医師に相談するようにしましょう。

食事の影響

食生活も、痛風の発症と大きく関わっています。尿酸値を上げる原因となるプリン体を多く含む食品を、過剰に摂取すると、高尿酸血症のリスクが高まります。プリン体とは、細胞の核に多く含まれる物質で、細胞分裂が盛んな食品に多く含まれます。

例えば、レバーや白子などの動物の内臓、カツオやサンマなどの青魚、肉の煮汁やだし汁などを想像してみてください。これらの食品は、細胞分裂が活発なため、プリン体を多く含んでいます。また、アルコールも尿酸値を上昇させる原因の一つです。特に、ビールはプリン体を多く含むため、痛風の人は注意が必要です。

遺伝的要因

痛風は、遺伝的な要因も関係していると言われています。家族に痛風の人がいる場合、そうでない人と比べて、痛風を発症するリスクが高くなるというデータがあります。これは、尿酸の代謝に関わる遺伝子が、親から子へと受け継がれるためと考えられています。

例えば、尿酸の排泄に関わる遺伝子に生まれつき変異があると、体外に尿酸を排出する力が弱くなってしまい、高尿酸血症になりやすくなります。痛風は、遺伝的な要因と、食生活などの環境要因が複雑に影響し合って発症すると考えられています。

痛風と高尿酸血症の違い

高尿酸血症は、あくまでも血液検査の結果、尿酸値が高い状態のことを指します。一方、痛風は、高尿酸血症が続いた結果、尿酸が結晶化して関節に溜まり、炎症を起こして激しい痛みや腫れを引き起こす病気です。つまり、すべての高尿酸血症の人が痛風を発症するわけではありませんが、痛風の人は必ず高尿酸血症であるということになります。

高尿酸血症の診断方法

高尿酸血症の診断は、前述のように血液検査によって行われますが、尿酸値の基準値は、男性で7.0mg/dL、女性で6.0mg/dLとされています。

検査の結果、尿酸値が基準値を超えている場合は、高尿酸血症と診断されます。高尿酸血症と診断された場合は、医師の指示に従い、食生活の改善、運動療法、必要であれば薬物療法などの治療が必要となります。

痛風予防のために食事で気を付けるべきこと

痛風は、食生活と密接な関係がある病気です。毎日の食事の中で、少し意識するだけで、発症のリスクを抑えたり、症状をコントロールしたりすることができます。「風が吹いても痛い」と表現されるほどの激痛を予防するために、一体どんな食事に気を付ければ良いのか、詳しく見ていきましょう。

高プリン食品との関連性

よく「プリン体が多い食品を食べると痛風になる」と言われますが、正確には「プリン体を多く含む食品を食べ過ぎると、尿酸値が上がり、痛風発作のリスクが高くなる」と言えます。

痛風を予防するためには、プリン体を多く含む食品を控えめにし、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。

例えば、プリン体を多く含む食品として、レバー、白子、あん肝などのお肉の内臓系、カツオやサンマなどの青魚、エビやカニなどの甲殻類、干し椎茸などが挙げられます。

これらの食品を食べる際は、量に気を付けたり、頻度を減らしたりするなどの工夫をしてみましょう。過剰に摂取しなければ、これらの食品を完全に排除する必要はありません。楽しんで食事をすることも大切です。

糖尿病との関係性

また糖尿病と痛風は深い関係があることが知られています。

糖尿病になると、血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用するために必要なインスリンというホルモンの働きが悪くなります。インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖を細胞に取り込む働きをしています。糖尿病では、インスリンの分泌量が減ったり、インスリンがうまく働かなくなったりするため、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれにくくなり、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなってしまいます。

血糖値が高い状態が続くと、血管が傷つきやすくなり、動脈硬化が進行します。動脈硬化は、様々な病気の原因となりますが、痛風もその一つです。動脈硬化によって腎臓の働きが低下すると、尿酸がうまく排泄されなくなり、高尿酸血症を引き起こしやすくなります。

糖尿病と痛風の両方を予防するためには、食生活の改善が非常に重要です。具体的には、以下の様な点に注意しましょう。

  • 甘い飲み物やお菓子の摂り過ぎを控える
  • 野菜を積極的に食べる
  • 食物繊維を多く含む食品を選ぶ
  • 規則正しい時間に食事をする
  • 腹八分目を心がける

これらのポイントを意識することで、血糖値の上昇を抑え、尿酸値の増加を防ぐことができます。

アルコールの制限と効果

お酒が好きな人にとって、痛風は特に注意が必要な病気です。アルコールは、体内で分解される過程で、尿酸の産生を促進したり、尿酸の排泄を抑制したりする働きがあります。

アルコールは、肝臓で分解されてアセトアルデヒドという物質になります。アセトアルデヒドは、さらに分解されて酢酸になり、最終的には水と二酸化炭素に分解されて体外に排出されます。

このアルコールの分解過程で、尿酸の産生が促進されます。

特に、ビールはプリン体を多く含むため、痛風患者さんにとっては要注意の飲み物です。ビール酵母にプリン体が含まれているため、ビールを飲むと尿酸値が上がりやすいです。

痛風を予防するためには、アルコールの摂取量を控えることが大切です。アルコールを飲む場合は、以下の様な点に注意しましょう。

  • 飲酒量を控えめにし、飲み過ぎない
  • ビールよりも、プリン体の少ない蒸留酒(焼酎、ウイスキーなど)を選ぶ
  • お酒を飲む時は、水を一緒に飲む
  • 空腹時や寝る前の飲酒は避ける

アルコールは、適量であればストレス解消や食欲増進などの効果も期待できますが、過剰に摂取すると健康を害する可能性があります。節度を守って、楽しくお酒を飲みましょう。

痛風は、食生活の改善やアルコールの摂取制限など、日常生活の中で予防できる病気です。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、健康的なライフスタイルを心がけましょう。

参考文献