睡眠時間が便秘のリスクになる??

わだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

これまで検査や治療などの説明を行なってきた当ブログですが、新シリーズとして国内、海外の論文で皆さまの健康長寿のお役に立てる様なものをピックアップしご紹介させていただこうと思います。

第1回目は日本語に訳すると”成人男女における睡眠時間と慢性便秘の関連性”というタイトルの論文で中国人の研究者が今年の8月に発表したものです。

英語タイトルは”Association of sleep duration with chronic constipation among adult men and women: Findings from the National Health and Nutrition Examination Survey”といいFrontiers in Neurologyいう雑誌に掲載されています。

論文の内容について説明させていただこうと思いますが、最後まで読むのは大変という方もいらっしゃると思います。

そこでまず結論を言いますと、”男性では短い睡眠時間が、女性では過度の睡眠時間が便秘のリスクを高める”とされています。

それでは論文の内容について簡単に説明していきます。

まず便秘は当院のホームページでも説明させていただいていますが、硬い便や排便回数が少ない、腹痛などを特徴とし、世界の成人人口の10-15%がかかっている一般的な病気です。

これまでの研究で、不健康な睡眠パターンが胃・十二指腸潰瘍や逆流性食道炎、過敏性腸症候群などの消化器系の病気をきたしやすいこと言われてきましたが、睡眠時間が便秘に与える影響については十分に検討されていませんでした。

この論文では、不健康な睡眠時間が便秘のリスクを高めるのではないかという仮説を立てた上で検証がされています。

検証の方法ですが、2005年から2010年のアメリカの全国健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Surveys)のデータを活用して、20歳以上の1万人以上の成人男女が対象です。

そのうち睡眠と腸の健康についてのアンケートに回答した方を①超短時間睡眠(5時間未満)、②短時間睡眠(5~6時間)、③適切な睡眠時間(7~8時間)、④長時間睡眠(9時間以上)の4つのグループに分けています。また便秘は以下のブリストル便性状スケールというものを用いて Type 1(ウサギの糞の様な便)またはType 2(コロコロの便がつながった状態)と定義しています。

結果です。11785人の研究対象者のうち、男性の4.3%、女性の10.2%がそれぞれ便秘症であり、便秘症患者の半数以上は、適切な睡眠時間(7~8時間)が得られていないことが分かりました。

また男性の便秘症患者は睡眠時間が短い(5~6時間)人の割合が高く、女性の便秘症患者は睡眠時間が長い(9時間以上)人の割合が高いという、男女で真逆という興味深い結果でした。

その他男性の便秘症患者の特徴として、睡眠時間が短いことに加えて独居が多い、BMIが低い、蛋白質、食物繊維、水分の摂取量が少ないという傾向がみられました。

また女性の便秘症患者の特徴として、BMIが低い、飲酒習慣がない、食物繊維、多価不飽和脂肪酸(血中の中性脂肪やコレステロール値を調節する働きがあると言われており、ごま油、オリーブ油などに多く含まれています)、水分の摂取量が少ないという傾向がみられました。

以上になりますが、睡眠時間が短い男性が便秘のリスクを高めるというのは何となくイメージ出来ましたが、女性においては過度の睡眠時間が便秘のリスクを高めるというのは驚きの結果でした。

当院では便秘に悩まれている患者様に対して、それぞれの状態に応じた便秘薬を処方させていただきますが、皆様がご自身でできることとして適切な睡眠時間(7~8時間)の確保をお勧めさせていただきます。

*私自身もこの論文を読んで夜更かしを控えようと思いました。

また論文では食事療法もについても触れられています。以前からも度々ご紹介させていただいておりますが、当院ではクリニックには珍しく、管理栄養士が常勤として勤務しており、「栄養相談」という形で食事療法のアドバイスを行うことが可能です。予約制ではありますが、1回30分程度で行うことが出来ますので診察の待ち時間などを利用することが出来ますので、医師やスタッフにお気軽にご相談下さい。

便秘で困っている方がいらっしゃいましたら一度ご相談ください。