私の医師人生、そしてこれから

わだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

2022年10月31日付で大分市医師会立アルメイダ病院を退職し、常勤医としての生活が終わりました。

佐賀大学医学部を卒業し、地元の大分県で働くことを決め大分県立病院で初期研修医として医師人生を開始してから早12年。せっかくなので、この機会に少し振り返ってみたいと思います。

大分県立病院には初期研修医の2年に加え、後期研修医として1年間在籍させていただきました。大分県立病院では医師の基礎としての部分を徹底的に学び、そして叩き込まれました。患者さんの診療はもちろんですが、医師としての姿勢、仕事を行っていく上でのマネジメント、他職種とのコミュニケーション、チーム医療、プレゼンテーションなどなど挙げればキリがありません。その後の自分の医師人生を支えてくれている土台となっており、本当に貴重な3年間でした。また研修医の人数が県内トップクラスに多いこの病院では、数多くの同期や先輩、後輩に恵まれました。残念ながら同期のほとんどは現在は県外の病院に所属、勤務していますが、コロナ渦の前は福岡でよく集まっており、またいつの日か会える日を楽しみにしています。

医師4年目には大分大学医学部附属病院の消化器内科学講座に入局させていただき、村上 和成教授をはじめ多くの先生方と新たに出会うことが出来ました。大学病院で働いた期間はわずか1年でしたが、その時出会った先生方との関係は今でも続いており、仕事だけでなくプライベートにおいても大きな存在になっています。

その後は大分赤十字病院で3年間勤務しました。大分市の中心地にある病院だけに多くの救急患者さんを診察し、また当時の部長で、自分の人生の師でもある石田 哲也先生の下で潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される炎症性腸疾患の患者さんを数多く担当させていただきました。安倍晋三・元首相が罹っていたことでも知られるこの病気は、以前は多くの方が手術を行わざるを得ず、日常生活にも支障をきたしていましたが、日々新たな治療法が開発されており、寛解(症状などが落ち着いていること)が維持できる様になっています。今後も最新の治療をアップデートし、皆さまにお届けすることができればと思います。

また現部長である上尾哲也先生には臨床研究のイロハを教えていただき、Antacids may increase the appearance of white opaque substance in Helicobacter pylori -eradicated gastric epithelial neoplasiaというタイトルの論文を書くことが出来、医学博士号を取得することが出来ました。

*詳しい内容はまた別の機会にお話しさせていただこうと思いますが、病変を拡大しがんなどの詳細な観察を行い診断を行う拡大内視鏡に関連したものです。

またこの研究内容は数多くの先生方に興味を持っていただき、福岡大学筑紫病院の内視鏡部の教授で拡大内視鏡の権威であられる八尾 建史先生にもアドバイスを頂くことが出来ました。その縁あって九州胃拡大内視鏡研究会という大きな学会で発表もさせていただきました。福岡県で開催されたのですが、これまでに発表したことがない規模の会場で、東京、大阪などにもサテライトで中継されるという状況のため震える足を必死に押さえながら発表したことを記憶しています。その他海外の学会にも参加、発表する機会に恵まれ。特に韓国で開催されたInternational Digestive Endoscopy Network2017ではDistinguished Poster Awardsという賞を頂き、表彰されたことは自分の勤務医人生の中でも大きな喜びの一つです。

その後は佐伯市の南海医療センターで2年間勤務させていただきました。それまで大分市の総合病院で消化器内科(同じ部署)の医師が6,7人いた状況からわずか2人という環境で当初は四苦八苦しました。また佐伯市唯一の公的な病院であり、最後の砦にならないといけないというプレッシャーも強く感じましたし、勤務2年目には消化器内科の部長という大役を任ぜられ、管理職の難しさも経験しました。ただしこの2年間を経験出来たことで自分自身の成長を実感できましたし、また異動直前には新病院へ移転するという大きなイベントがあり、総合病院の移転という滅多にない経験をすることが出来ました。

南海医療センターを離れてからは、冒頭でも触れましたが和田医院、そして1月に開業するわだ内科・胃と腸クリニックに程近い大分市医師会立アルメイダ病院で約2年半勤務させていただきました。

アルメイダ病院は大分市の中では大分県立病院以外の唯一の三次救急医療機関であり、昼夜を問わず数多くの救急患者さんが受診される病院であり、吐血や下血といった消化管出血、急性胆のう炎、胆管炎、急性膵炎、急性虫垂炎などの緊急処置、手術が必要な方の初期対応や緊急処置を数多く行いました。また緊急疾患だけでなく、食道がん、胃がん、大腸がんなどの診断、そして早期の場合には内視鏡治療やがん患者さんの抗がん剤治療にも関わらせていただきました。その他肝臓専門医という資格を生かしB型肝炎やC型肝炎、アルコール性肝炎や肝硬変、脂肪肝の治療も数多く行なってまいりました。役職としましても、昨年より内視鏡センター長及び消化器内科副部長、今年度からは消化器内科部長を拝命しより責任感を持って診療に当たらせていただきました。そして昨日に至ります。

以上まとまりのない文章となってしまいましたが、私の医師人生の流れをつらつらと書かせていただきました。

もちろん医師という職業上、これまで数多くの患者さんとの別れを経験してきました。またこの12年間の間に肉親、身近な方との別れも経験しました。日本人の2人に1人が生涯でがんになる時代で、病気がなくなることは決してありません。ただし少しでもがん、病気で苦しむ方を減らすことができればという気持ちで和田医院、そして1月からはわだ内科・胃と腸クリニックで診療を行なっていきます。私がこの12年間で学んだ知識、経験を地域の皆さまに還元できればと思いますので、何卒宜しくお願いいたします。