超音波内視鏡検査って何?

わだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

シリーズ化された感もありますが総合病院で行う治療、検査について説明させていただきます。

治療、検査については施設毎、また患者様それぞれによって異なり、あくまで皆さまにイメージして頂くために記載したものですのでその点はご理解下さい。

今回のテーマは超音波内視鏡検査(EUSといいます)についてです。

それでは始めていきます。

●EUSとは

EUS(Endoscopic Ultrasonography:超音波内視鏡)は先端に超音波装置が付いている特殊な内視鏡で、画像精度が高く嚢胞の内部の詳細な観察やわずかな変化を捉えることが出来ます。体の表面からの腹部超音波検査(腹部エコー検査)と異なり、消化管のガスや脂肪などにより画像が不鮮明になることがないため、サイズの小さな早期の病変の発見、観察にも優れています。

また組織検査が必要な場合にはEUS-FNA(Endoscopic UltraSound-guided Fine Needle Aspiration:超音波内視鏡下穿刺吸引法 )という、超音波内視鏡を用いて病変から組織を採取する方法を行うことも可能です。

特に膵臓の病気である膵嚢胞性腫瘍や膵臓がんなどに関する詳しい検査として行うことが多いです。その他胆管結石などに関しても行う場合がありますが、今回は膵嚢胞性腫瘍に絞ってお話しします。

●膵嚢胞性腫瘍とは

嚢胞性腫瘍とは、中に液体が貯まった袋状の構造(嚢胞:水の袋)を含む腫瘍のことを指します。症状がなく、経過観察可能なものもあれば、悪性化する可能性があり、手術などによる治療が必要なものもあります。代表的なものとして膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、漿液性嚢胞腫瘍(SCN)、充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)などがあります。

嚢胞の大きさや位置関係などを評価するためにCTやMRIなどの画像検査が行われますが、その他今回のテーマである超音波内視鏡検査を用います。

以下代表的な膵嚢胞性腫瘍について簡単に説明させていただきます。

IPMN:膵管の上皮に腫瘍細胞ができ、粘液を分泌することで膵管が徐々に太くなり嚢胞上に見える病気です。無症状で健康診断や人間ドック、他の病気の際に偶然見つかるケースも多いです。高齢の男性に多く、好発部位は膵頭部です。一般的には悪性度の低い腫瘍で、ほとんど変化しないものもありますが、嚢胞の増大などにより悪性化を疑った場合には手術が必要となります。

MCN:膵臓の体尾部に好発する腫瘍で、患者さんのほとんどが女性です。増大速度は遅く、比較的おとなしい腫瘍ですが悪性例の存在もあり原則的に外科手術が必要となります。

SCN:小さな嚢胞が多数集まってできる腫瘍で、基本的には良性の腫瘍です。一般的に無症状でサイズの変化もみられないことがほとんどで経過観察可能ですが、まれにサイズが大きくなり腹痛などの症状を認めた場合には手術が必要となることもあります。

SPN:膵腫瘍の1-3%と比較的まれな腫瘍で、若い女性の膵体尾部に好発します。腫瘍の内部の血管が破綻し、出血や壊死をきたすことにより嚢胞が形成されます。悪性度は低いですが、まれに転移することがあり、原則的に外科手術が必要となります。

●検査の流れ

続いて検査の流れです。検査時間は通常30分程度です

基本的には日帰りで受けることができる検査です

  1. 鎮静剤の注射を行い検査を開始します
  2. 内視鏡を口から挿入し、胃や十二指腸まで到達させ、病変部の観察を行います
  3. 膵臓がんなどが疑われる場合にはソナゾイドという造影剤を点滴から注入します       ※安全性の高い薬剤ですが、卵アレルギーのある方は副作用が出る可能性がありますので事前にお申し出ください

●合併症

最後に合併症について説明しますが、通常の内視鏡検査と同様です。

体内の曲がったり、細くなった部分を内視鏡が通過する際にのどや食道、胃、十二指腸などを傷付けたり、出血や穿孔などをきたす場合があります。その際には輸血や追加の治療、緊急手術などが必要となる可能性があります。また鎮静剤による呼吸抑制や誤嚥性肺炎などがあります。

以上、超音波内視鏡検査と膵嚢胞性腫瘍について簡単に解説させていただきました。

私の現勤務先の大分市医師会立アルメイダ病院は大分県でもトップクラスの数の超音波内視鏡検査を行なっています。

わだ内科・胃と腸クリニックではこれまでの経験を生かし、膵疾患が疑われる場合にはアルメイダ病院を含めた総合病院と連携させていただき、患者様の治療方針を検討していきます。

これまで一度も腹部エコー検査を受けられていない方や以前膵臓の病気を言われたことがある方などはお気軽にお声掛けいただければと思います。