ピロリ菌はヨーグルトで除菌できるって本当?

わだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

皆さんは「ピロリ菌」という言葉を聞いたことがありますか?

ピロリ菌は、正式には「ヘリコバクター・ピロリ」と呼ばれる、胃の中に住んでいる細菌です。顕微鏡で見ると、まるで「らせん」のような形をしています。この形のおかげで、ピロリ菌は胃の中を自由に動き回り、胃の壁にくっついてしまうのです。

若い世代では、その感染率は数%まで減っていますが、60代以降では約半数がこのピロリ菌に感染しているとのデータもあります。

しかも、多くの場合、自覚症状がないまま感染が続くため、自分では気づかないうちに、胃の中で増殖している可能性があります。

ピロリ菌の基本的な特徴

ピロリ菌は、他の多くの細菌が死滅してしまうような強い酸性の環境である胃の中でも、生きていけるという、驚異的な生命力を持っています。これは、ピロリ菌が「ウレアーゼ」という酵素を産生し、胃酸を中和してしまうためです。

このピロリ菌の持つ「ウレアーゼ」は、胃の粘膜を傷つけ、炎症を引き起こす原因物質の一つと考えられています。

また、ピロリ菌は、一度感染すると、胃の中に長く住み着き続けるという特徴があります。そして、長期間にわたって胃に炎症を引き起こし続けることで、胃潰瘍や慢性胃炎、さらには胃がんのリスクを高めることがわかっています。

ピロリ菌の感染経路とリスク要因

ピロリ菌は、主に口から体の中に入ってきます。

例えば、感染している人の唾液が付着した食べ物を口にしたり、食器を共有したりすることで感染する可能性があります。

特に、衛生状態が悪い環境では、ピロリ菌が繁殖しやすく、感染のリスクが高まります。

また、ピロリ菌は、家族間で感染しやすいことも知られています。これは、日常生活の中で、同じ食器を使ったり、同じものを食べたりすることで、感染が広がりやすいためです。

ピロリ菌の感染リスクを高める要因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 衛生状態の悪い環境で生活している
  • ピロリ菌に感染している人と同居している
  • 発展途上国への渡航歴がある
  • 幼児期に井戸水や湧き水を飲んでいた経験がある

これらの要因に当てはまる方は、特にピロリ菌感染に注意が必要です。

例えば、世界的に見ると、上下水道などの衛生環境が整っていない発展途上国では、ピロリ菌の感染率が高い傾向にあります。また、日本では、1950年代以前は衛生状態が悪く、ピロリ菌の感染率が高かったため、ご高齢の方々は特に注意が必要です。

ピロリ菌の感染経路やリスク要因を知ることは、自分自身や家族をピロリ菌感染から守る上で、とても大切なことです。

ヨーグルトによるピロリ菌の除菌効果と摂取方法

テレビや雑誌などで「ヨーグルトが体に良い」という情報を耳にすることがあると思います。実は、ヨーグルトの中には、ピロリ菌を減らす効果が期待できるものもあるんです。ここでは、ヨーグルトがピロリ菌にどう作用するのか、そして、どのように摂取すれば効果的なのか詳しく解説していきます。

ヨーグルトがもたらすピロリ菌除菌のメカニズム

ヨーグルトには、乳酸菌という体に良い影響を与える菌が含まれています。この乳酸菌の中には、ピロリ菌を弱らせる力を持つものや、ピロリ菌が胃にくっつくのを邪魔するものもいます。イメージとしては、乳酸菌が悪者を退治してくれる頼もしいヒーロー、ピロリ菌は胃の壁にイタズラ書きをしようとするいたずらっ子だと考えてみてください。乳酸菌は、ピロリ菌が胃に定着するのを防ぎ、さらには、すでに住み着いてしまったピロリ菌を攻撃して、数を減らしてくれるのです。

例えば、LG21乳酸菌は、胃酸の中でも強いことが知られています。このLG21乳酸菌は、ピロリ菌をやっつける効果が期待され、実際に多くの研究でその効果が示唆されています。

ピロリ菌除菌に効果的なヨーグルトの摂取方法

ヨーグルトならどれでも良いわけではありません。ピロリ菌を抑える効果が期待できる特定の種類の乳酸菌が含まれているヨーグルトを選ぶことが重要です。いくつか例を挙げますね。

乳酸菌の種類特徴
LG21乳酸菌胃酸の中でも強く、ピロリ菌を抑える効果が期待されています。
ラクトバチルス・ガセリ菌胃酸に強く、ピロリ菌の増殖を抑え、胃の炎症を和らげる効果が期待されています。
ビフィズス菌腸内環境を整えることで、間接的にピロリ菌の増殖を抑える効果が期待されています。

またヨーグルトは毎日食べ続けることが大切です。毎日、決まった時間に食べる習慣をつけると、より効果的です。効果を感じ始めるまでには個人差がありますが、少なくとも数週間は続けてみましょう。

ただしヨーグルトによるピロリ菌除菌の効果は、まだ研究段階であり、ヨーグルトだけで完全に除菌できるわけではありません。しかし、毎日の食事に取り入れることで、ピロリ菌の数を減らし、胃の健康を守るための助けになる可能性は十分にあります。効果的なピロリ菌除菌のためには、専門医の指示に従って、適切な治療と組み合わせることが重要です。

ヨーグルト摂取によるピロリ菌除菌の良い傾向

「LG21乳酸菌」を使ったヨーグルトを1日2個、12週間食べ続けた研究では、ピロリ菌が減ったという結果が出ています。ヨーグルトの種類によって、含まれている乳酸菌の種類や量が異なるため、効果も変わってきます。

ピロリ菌をやっつけるには、お薬を飲むのが一般的ですが、ヨーグルトを毎日食べることで、ピロリ菌の増殖を抑えたり、除菌のサポートをする効果が期待できます。毎日の食事にヨーグルトをプラスして、善玉菌パワーで、胃の健康を守りましょう!

ヨーグルト摂取によるピロリ菌除菌の注意点

残念ながら、ヨーグルトは、ピロリ菌を完全にやっつける魔法の食べ物ではありません。ヨーグルトだけでピロリ菌を除菌することは難しいと言われています。あくまで、ピロリ菌撃退のサポート役と考えておくのが良いでしょう。

また、ピロリ菌をやっつける効果のある乳酸菌の種類や量、食べる量や期間は、人によって違います。効果を実感するためには、毎日継続して食べること、そして、自分の体質に合ったヨーグルトを見つけることが大切です。

ヨーグルトの効果には個人差があります。もし、ピロリ菌の検査で陽性となり、除菌を希望される場合は、自己判断でヨーグルトに頼るのではなく、医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。

当院ではピロリ菌の検査、除菌治療だけでなく、胃潰瘍や胃がんの早期発見のための胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を診療日には毎日行っています。
気になることがございましたらお気軽にお声掛けください。

*当院ではネットで胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)の予約が出来ますので、ぜひご活用ください。

参考文献

  1. Li Y, Choi H, Leung K, Jiang F, Graham DY and Leung WK. Global prevalence of Helicobacter pylori infection between 1980 and 2022: a systematic review and meta-analysis. The lancet. Gastroenterology & hepatology 8, no. 6 (2023): 553-564.
  2. Sun L, Zheng H, Qiu M, Hao S, Liu X, Zhu X, Cai X and Huang Y. Helicobacter pylori infection and risk of cardiovascular disease. Helicobacter 28, no. 3 (2023): e12967.