亜鉛って何?〜亜鉛不足の症状や原因まで〜

大分県大分市のわだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

皆様は亜鉛(あえん)という言葉を聞いたことがありますか?

当院に受診されている方の中には「亜鉛が低いので薬を始めましょう」と私、もしくは理事長から言われたことのある方もいらっしゃるかと思います。

ただ実際に亜鉛って何なの?という方も多いと思いますので、今回は亜鉛についてお話ししたいと思います。

亜鉛とは?

私たちの体は、まるで精巧な機械のように、様々な栄養素が歯車となって働いています。その中でも「亜鉛」は、細胞の生まれ変わりや免疫システムの維持、そして味覚を感じるなど、多岐にわたる役割を担う重要な栄養素です。体内では、主に皮膚や骨、筋肉、肝臓や腎臓、脳などに分布しています。

以下、亜鉛の主な働きとなります、

  1. 味覚の維持
  2. (小児における)身長の伸び
  3. 皮膚の代謝
  4. 生殖機能
  5. 骨格の発育
  6. 精神・行動への影響
  7. 免疫機能

亜鉛不足とは?

しかし、この亜鉛が不足すると、体の中で様々な不調が生じてしまうことがあります。

例えば、成長期の子供であれば、身長が伸びにくくなったり、傷の治りが遅くなることがあります。これは、亜鉛が細胞分裂や成長に深く関わっているためです。

また、大人の場合は、免疫力が低下し、風邪を引きやすくなったり、疲れやすくなったりすることがあります。さらに、皮膚や髪の毛、爪などにトラブルが生じたり、味覚が鈍ったりすることもあります。

このように、亜鉛は私たちの健康にとって欠かせない栄養素なのです。

亜鉛不足の定義とメカニズム

亜鉛は、血液検査の値として80〜130μg/dLを維持することが適切であるとされており、これを下回る場合を亜鉛不足と呼びます。

亜鉛の適切な摂取量は、年齢・性別によって異なりますが、妊婦や授乳婦では、推奨されている量に比べて摂取量が著しく少ないことが知られています。

亜鉛は体内で作ることができないため、食事から摂取する必要があります。

健康な状態であれば、食事から摂取した亜鉛と、便や尿、汗などによって体外に排出される亜鉛の量はバランスが保たれています。

しかし、偏った食生活や無理なダイエット、特定の病気や手術の影響などで、摂取量が減ったり、排出量が過剰になったりすると、体内の亜鉛が不足してしまうことがあります。

例えば、加工食品ばかり食べていると、亜鉛の含有量が少ないため不足しやすくなります。また、過度な飲酒は、亜鉛の吸収を阻害するだけでなく、尿として排出を促してしまうため注意が必要です。

さらに、成長期の子供や妊娠中、授乳中の女性は、多くの亜鉛を必要とするため、不足しやすくなります。

亜鉛不足が体に与える影響

亜鉛は、体の様々な機能に関与しているため、不足すると様々な症状が現れます。

  • 味覚障害: いつも美味しく食べていたものが、なんだか味がぼやけて感じたり、味が分からなくなったりすることがあります。 これは、亜鉛が味を感じる器官「味蕾(みらい)」で重要な役割を担っているからです。味蕾は、舌にある小さな器官で、食べ物の味を感じ取るセンサーの役割をしています。亜鉛は、このセンサーが味を感知し、脳に伝えるのを助ける働きをしています。
  • 皮膚炎: お肌は、体のバリア機能として重要な役割を担っていますが、亜鉛不足になると、そのバリア機能が低下し、炎症を起こしやすくなってしまいます。湿疹やかゆみ、ニキビが悪化するなど、様々な肌トラブルが起こりやすくなります。
  • 免疫力の低下: 体を守る免疫システムも、亜鉛が大きく関わっています。亜鉛が不足すると、免疫細胞の働きが弱まり、風邪などの感染症にかかりやすくなるだけでなく、傷の治りが遅くなったり、悪化しやすくなったりすることもあります。
  • 成長の遅延: 特に、成長期のお子さんにとっては、亜鉛は非常に重要です。亜鉛は、細胞分裂やタンパク質の合成に欠かせない栄養素であるため、不足すると身長が伸びにくくなったり、体重が増えにくくなったりすることがあります。
  • 脱毛: 髪の毛の成長にも、亜鉛は必要不可欠です。亜鉛が不足すると、髪の毛が十分に成長せず、抜け毛が増えたり、髪が細くなったりすることがあります。

その他、食欲がない、傷が治りにくい、生殖機能の低下などの症状も出現します。

亜鉛不足を診断する検査方法

「もしかして亜鉛不足かな?」と思ったら、医療機関を受診して、血液検査を受けましょう。血液検査では、血液中の亜鉛の濃度を測定します。

血液検査の結果、亜鉛の濃度が基準値を下回っている場合は、亜鉛不足と診断されます。

亜鉛不足の改善方法と亜鉛豊富な食品

続いて亜鉛不足を改善する方法と、どんな食べ物に亜鉛が多く含まれているのか、詳しく解説していきます!

亜鉛不足の改善方法

亜鉛不足を改善する最善の方法は、毎日の食事で積極的に亜鉛を摂ることです。亜鉛は体内で作り出すことができないため、食べ物から摂取する必要があるのです。

例えば、鉄分が不足すると鉄欠乏性貧血になるように、亜鉛も不足すると体に様々な不調が現れます。

では、具体的にどのように亜鉛を摂ればいいのでしょうか?

最も効果的なのは、亜鉛を多く含む食品を毎日の食事に取り入れることです。次の章で紹介する食品を参考に、色々な食材を組み合わせて、バランスの取れた食事を心がけましょう。

亜鉛を多く含む食品の紹介

亜鉛を多く含む食品は、大きく分けて3つのグループに分けることができます。

  1. 魚介類: 牡蠣(かき)は「海のミルク」と呼ばれるほど栄養豊富で、亜鉛の含有量は食品の中でもトップクラスです。その他、カニ、エビ、いわし、さんまなどもおすすめです。
  2. 肉類: 牛肉、豚肉、鶏肉にも亜鉛は含まれています。特にレバーは、亜鉛含有量が非常に多く、貧血予防にも効果が期待できます。
  3. 豆類: 納豆、豆腐などの大豆製品にも亜鉛が含まれています。

その他のりやわかめなどの藻類やごまやアーモンド、ピーナッツなどの種実類などのも亜鉛が多く含まれていることが知られています。

これらの食品をバランスよく食べることで、効率的に亜鉛を摂取することができます。食品から亜鉛を摂取する場合、ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が高まります。果物や野菜も一緒に食べるように心がけましょう。

亜鉛のサプリメントの効果と選び方

食事だけで十分な亜鉛を摂取することが難しいと感じる場合は、サプリメントを利用するのも一つの方法です。亜鉛のサプリメントは、薬局やドラッグストア、インターネットなどで購入することができます。

様々な種類のサプリメントが販売されていますが、含有量や吸収率、価格などを比較して選ぶようにしましょう。特に、吸収率はサプリメントによって大きく異なるため、確認が必要です。

サプリメントを選ぶ際には、信頼できるメーカーのものを選ぶことが大切です。パッケージに記載されている原材料や栄養成分表示をよく確認するようにしましょう。

また、亜鉛のサプリメントは、過剰摂取に注意が必要です。過剰に摂取すると、吐き気や下痢、腹痛などの症状が現れる可能性があります。決められた量を守って摂取するようにしましょう。心配な場合は、医師や薬剤師に相談してみるのも良いでしょう。

亜鉛は私たちの健康に欠かせない栄養素です。日頃から意識して摂取するようにしましょう。

参考文献