梅雨型熱中症とは

わだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

大分県も梅雨入りし、じめじめとした毎日が続いています。

じめじめとした梅雨の時期、気温はそれほど高くなくても、実は熱中症のリスクが潜んでいます。

今回は梅雨時期に注意が必要な、梅雨型熱中症についてお話したいと思います。

梅雨型熱中症の定義と特徴

梅雨型熱中症とは、梅雨の時期特有の高湿度な環境下で発症する熱中症のことです。気温が25度くらいでも、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなるため、体温調節がうまくいかずに熱中症になってしまうことがあります。

まるで、洗濯物が乾きにくい日に、私たちの体からも汗が蒸発しにくく、体温調節がうまくいかない状態を想像してみてください。湿度が60%の日と80%の日では、同じ気温でも体感温度が大きく違います。 湿度80%の場合は、まるでサウナ風呂に入っているような状態になり、体に大きな負担がかかります。

例えば、私は以前に、気温は25度程度とそれほど高くなかったにも関わらず、湿度が80%を超える日に、室内で過ごしていた高齢の患者さんが、めまいと倦怠感を訴えて来院されたケースを経験しました。 この患者さんは、エアコンをつけずに過ごしていたため、室温はそれほど高くありませんでしたが、湿度が高かったために、梅雨型熱中症を発症してしまったと考えられます。

梅雨型熱中症の特徴としては、以下のようなものがあります。

  • 気温が低い日でも発症する可能性がある
  • 室内での発生が多い
  • 高齢者や子ども、持病のある方に多い

梅雨型熱中症と一般的な熱中症の違い

一般的な熱中症は、気温の高い夏の日に屋外で発症することが多いのに対し、梅雨型熱中症は、気温がそれほど高くなくても、湿度が高い梅雨の時期に、室内で発症することが多いという違いがあります。

特徴梅雨型熱中症一般的な熱中症
発生時期梅雨の時期(6月~7月)夏の時期(7月~8月)
気温25度前後と比較的低い30度以上と高い
湿度80%以上と非常に高い比較的低い
発生場所室内屋外

また、梅雨型熱中症は、体が暑さに慣れていない時期に発症しやすいため、一般的な熱中症よりも重症化しやすいという特徴もあります。気温と様々な病気の罹患率との関連を調べた研究では、熱ストレスは、心血管疾患、呼吸器疾患、代謝性疾患、腎臓疾患、精神神経疾患など、幅広い健康問題と関連していることが明らかになっています。

梅雨の時期は、気温が低い日でも油断せず、こまめな水分補給や室温調節などの対策を心がけるようにしましょう。

梅雨型熱中症の原因と病態

梅雨の時期は、気温がそこまで高くなくても、熱中症になることがあります。これは「梅雨型熱中症」や「湿度熱中症」などと呼ばれる、梅雨の時期特有の熱中症です。なぜなら、梅雨の時期は湿度が高く、体が熱をうまく逃がせない状態になっているからです。まるで、蒸し暑いサウナの中にいるような状態を想像してみてください。サウナは高温ですが、湿度が低いので汗が蒸発しやすく、比較的長くいられます。しかし、梅雨時は湿度が高いため、汗が蒸発しにくく、体温が下がりにくいのです。

梅雨型熱中症の原因と発症リスク

梅雨型熱中症は、高温多湿な梅雨の気候が原因で起こります。気温が25度くらいでも、湿度が80%を超えると、熱中症のリスクが高まります。気温が低くても、湿度が高いと、私たちの体は汗をかいても蒸発しにくく、体温調節がうまくいかなくなってしまいます。

例えば、真夏の炎天下で運動するのと、梅雨時の曇りの日に運動するのとでは、どちらが熱中症になりやすいでしょうか? 多くの人は、炎天下での運動をイメージするかもしれません。しかし実際には、梅雨時の曇りの日の方が、熱中症のリスクが高い場合もあるのです。

梅雨型熱中症になりやすい人の特徴

  • 高齢者: 体温調節機能が低下し、暑さや喉の渇きを感じにくくなります。
  • 乳幼児: 体温調節機能が未発達で、汗をかきやすい一方、水分補給がうまくできません。
  • 肥満の方: 皮下脂肪が多く、熱がこもりやすい体質です。
  • 持病のある方(高血圧、糖尿病、心臓病など): 持病によっては、体温調節機能が低下していたり、服用の薬の影響で脱水になりやすくなることがあります。
  • 寝不足の方: 体力や免疫力が低下し、熱中症のリスクが高まります。
  • 脱水症状の方: 体内の水分量が不足していると、体温調節がうまくいかなくなります。
  • 厚着をしている方: 衣服内の温度が上昇し、体内の熱を逃がしにくくなります。
  • エアコンを使わない環境にいる方: 室温が高い状態が続くと、体温が上昇しやすくなります。

梅雨型熱中症の病態生理について

私たちの体は、体温が上がりすぎると、汗をかいて体温を下げようとします。しかし、湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなり、体温がうまく下がらず、体の中に熱がこもってしまいます。その結果、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、様々な症状が現れます。

梅雨型熱中症になるとどうなるの?

人間の体は、約60%が水分でできています。この水分が不足すると、血液の循環が悪くなったり、体温調節がうまくいかなくなったりします。私たちの体は、まるで車のエンジンのようなものです。エンジンが正常に動くためには、冷却水が不可欠です。水分不足は、エンジンの冷却水が不足している状態と同じで、様々な不調を引き起こします。そして、めまいや頭痛、吐き気などの症状が現れ、重症化すると意識障害や痙攣などを起こすこともあります。

梅雨型熱中症は、初期症状に気づきにくく、重症化する可能性もあるため注意が必要です。こまめな水分補給や適切な室温管理など、予防対策をしっかりと行いましょう。

梅雨型熱中症の症状と重症度

梅雨の時期は、気温が低くても湿度が高い日が多く、気づかないうちに熱中症になってしまうことがあります。「梅雨だるいなぁ」「体が重いなぁ」と感じていませんか?それはもしかしたら、梅雨型熱中症のサインかもしれません。

梅雨型熱中症の主な症状とその重症度分類

梅雨型熱中症の症状は、軽度なものから重症化するものまでさまざまです。

重症度症状具体例
Ⅰ度めまい、立ちくらみ、筋肉のけいれんや痛み、大量の発汗・立ち上がると、まるで景色がグルグルと回転しているように感じる。・急に立ち上がったら、足に力が入らず、転びそうになった。・大量の汗で、シャツがびしょ濡れになってしまった。
Ⅱ度頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感・頭の中で鐘が鳴っているような、激しい痛みがする。・胃がムカムカして、吐き気がする。・体が鉛のように重く、動くのもつらい。
Ⅲ度意識障害、痙攣、運動障害・呼びかけても、反応がない。・体が自分の意思とは関係なく、ビクンビクンと動いてしまう。・立とうとしても、全く力が入らず、その場に倒れこんでしまった。

このように、梅雨型熱中症は症状が悪化するスピードが速く、命に関わる危険性もある怖い病気です。

梅雨型熱中症と他の熱中症の症状の違い

梅雨型熱中症と、夏の暑い時期に起こりやすい熱中症では、症状の出方に違いがあります。夏の熱中症は、まるでフライパンの上で焼かれているように、強い日差しによって体温が急上昇することが原因で起こります。そのため、皮膚の温度が上昇しやすく、顔が赤くなるなどの症状が出やすいです。

一方、梅雨型熱中症は、蒸し風呂の中にいるように、高い湿度によって体の熱がうまく外に逃げず、体に熱がこもってしまうことが原因で起こります。そのため、皮膚の温度はあまり高くならず、顔が青白いなどの症状が出やすいという特徴があります。

 梅雨型熱中症夏の熱中症
発生時期梅雨時(気温が低い日でも湿度が高い日)夏の暑い時期(気温が高い日)
原因湿度が高い気温が高い
症状顔色が青白い、皮膚の温度はあまり高くならない、だるさ、吐き気、めまい顔色が赤い、皮膚の温度が高い、意識障害、けいれん、運動障害など 例えば、炎天下のマラソン大会で、意識を失って倒れてしまい、救急搬送された。というケースは夏の熱中症の典型例です。
なりやすい人高齢者、子供、持病のある人全ての人

梅雨型熱中症は、夏の熱中症ほど自覚症状が出にくいため、周囲の人が異変に気づいてあげることが重要です。

梅雨型熱中症の診断と検査方法

梅雨時期は、気温が低くても湿度が高い日が続くため、気づかないうちに熱中症になってしまうことがあります。 まるで、サウナに入った後のように体がだるくなったり、頭がぼーっとしたりすることがありますよね。 適切な予防と対策が必要です。

梅雨型熱中症の診断基準と注意すべきポイント

梅雨型熱中症の診断は、問診や診察、体温測定などの結果を総合的に判断して行います。 特に、湿度が高い環境で過ごしていたか、十分な水分補給ができていたか、汗をかきやすい状況であったかなどを確認することが重要です。

例えば、次のような症状が見られる場合は、梅雨型熱中症の可能性を疑います。

  • めまい:まるで、メリーゴーラウンドから降りた後のように、周囲がぐるぐる回って感じる状態です。
  • 頭痛:頭をハンマーで叩かれているような、ズキズキとした痛みを感じる人もいれば、頭全体が締め付けられるような重い痛みを感じる人もいます。
  • 吐き気:胃の中がむかむかして、吐き気がする状態です。
  • だるさ:鉛を体につけられているような、重だるい感覚に襲われます。
  • 筋肉のけいれん:まるで、電気が走るように、筋肉がピクピクと痙攣することがあります。
  • 意識障害:意識がもうろうとしたり、周囲の状況が理解できなくなったりすることがあります。

これらの症状に加え、体温が37度以上ある場合は、熱中症の可能性が高いと判断されます。

また、高齢者や乳幼児、持病のある方などは、熱中症のリスクが高いので、注意が必要です。 高齢者は体温調節機能が低下しやすく、乳幼児は自分で水分補給を訴えることが難しいためです。 持病のある方は、服用している薬の影響で体温調節機能が変化することがあります。

梅雨型熱中症の検査方法とその役割

梅雨型熱中症を診断するために、以下の検査を行うことがあります。

検査方法内容
尿検査尿中の電解質やクレアチニンなどを測定し、脱水症状の程度を評価します。
血液検査血液中の電解質や腎機能などを調べます。
心電図検査不整脈の有無を調べます。

これらの検査によって、脱水症状の程度や臓器への影響などを確認し、適切な治療方針を決定します。 例えば、尿検査では、尿の色や濃さ、尿中の電解質濃度などを調べることで、体の水分バランスが崩れていないかを確認します。 血液検査では、血液中のナトリウムやカリウムなどの電解質濃度を測定することで、脱水症状の程度をより正確に把握します。 また、腎臓や肝臓などの臓器にダメージが及んでいないかどうかも確認します。 心電図検査では、心臓の動きを記録することで、熱中症によって心臓に負担がかかっていないかを確認します。

これらの検査と診察結果を総合的に判断することで、患者さん一人ひとりに最適な治療法を選択することが可能になります。

梅雨型熱中症の治療と対処法

梅雨のジメジメとした空気。こんな時でも熱中症は容赦なく襲ってきます。今回は、梅雨型熱中症になってしまった場合の治療法について、具体的な症例を交えながら解説していきます。

梅雨型熱中症の治療方法と重症度に応じた対処法

梅雨型熱中症の治療の基本は、一般的な熱中症と同様です。涼しい場所に移動し、衣服を緩めて体を冷やし、水分と塩分を補給することが重要です。

例えば、先日来院した30代の男性は、室内でのデスクワーク中に軽いめまいと頭痛を訴え来院しました。エアコンをつけていましたが、湿度が高く、室温も30度近くあったため、梅雨型熱中症と診断しました。

このケースのように、軽症の場合は、涼しい場所で休んで水分と塩分を補給するだけで症状が改善することがほとんどです。経口補水液やスポーツドリンクを飲むのも効果的です。

しかし、症状が重い場合は、医療機関での治療が必要になります。例えば、意識障害や痙攣、高体温などの症状が現れた場合は、直ちに救急車を呼ぶ必要がある場合もあります。

重症度によって適切な治療法が異なるため、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。

梅雨型熱中症は、適切な予防と早期対応によって、重症化を防ぐことができます。梅雨の時期でも、こまめな水分補給や適切な室温管理を心掛け、健康に過ごしましょう。

参考文献