睡眠時無呼吸症候群の症状とは?

大分県大分市のわだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

あなたは、夜中に何度も目が覚めてしまう、朝起きてもスッキリしない、日中に強い眠気に襲われるなど、睡眠に関する悩みを抱えていませんか?もしかしたら、それは「睡眠時無呼吸症候群」のサインかもしれません。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気で、放置すると高血圧や心臓病、脳卒中などのリスクを高めると言われています。しかし、早期発見、早期治療すれば、これらのリスクを軽減できる可能性があります。今回は、睡眠時無呼吸症候群の症状や治療法について詳しく解説します。あなたの睡眠の質を高め、健康的な生活を送るための第一歩を踏み出しましょう。

睡眠時無呼吸症候群の一般的な症状とは?

睡眠時無呼吸症候群は、私たちの体に少しずつ影響を及ぼしていきます。自覚症状が少ないため、知らないうちに進行していることも少なくありません。早期発見、早期治療のためにも、まずはご自身が「あれ?」と感じるサインを見逃さないことが重要です。

日中の過度な眠気の原因

「日中なのに、耐えられないほどの眠気が襲ってくる…」

あなたは、会議中にウトウトしてしまったり、運転中に眠気でヒッとした経験はありませんか? 睡眠時無呼吸症候群では、こうした日中の過度な眠気が特徴的にみられます。

これは、夜間に何度も呼吸が止まることで、脳がしっかりと休むことができず、日中の活動に必要なエネルギーが充電できないことが原因の一つと考えられます。

睡眠中のいびきと呼吸停止

「毎晩、隣で寝ている家族から、大きないびきと呼吸の乱れを指摘される…」

睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状の一つがいびきです。そして、このいびきが大きくなったり、いびきの合間に呼吸が止まっている場合は要注意です。これは、気道が完全に塞がってしまうことで起こり、重症化するほど、呼吸停止の回数が増え、その時間も長くなる傾向があります。

まるで、水中で息を止めている状態を想像してみてください。苦しくなって、ハッと息継ぎをするように、睡眠中も無意識に呼吸が止まり、その度に脳や体は酸素不足に陥っているのです。

突然の目覚めと息切れ

「夜中に何度も、息苦しさで目が覚めてしまう…」

睡眠時無呼吸症候群の人は、夜中に何度も目が覚めてしまうことが多く、そのたびに不安や恐怖を感じることがあります。これは、呼吸が止まっている状態が続くと、体が酸素不足を察知して、緊急事態として脳を起こすためです。

朝の頭痛と疲労感

「朝起きた時から、頭が重く、体もだるくて、なかなか布団から出られない…」

睡眠時無呼吸症候群の人は、質の高い睡眠が取れないため、朝起きた時に頭痛や疲労感を感じることが多く、日中の集中力や作業効率の低下にも繋がります。

これは、睡眠中に呼吸が止まることで、脳がしっかりと休息できないことが原因の一つと考えられます。

さらに、最近の研究では、睡眠時無呼吸症候群は、糖尿病や高血圧、心疾患などのリスクを高める可能性も指摘されています。

例えば、重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群を有する2型糖尿病患者におけるリラグルチドの効果を検証した研究では、CPAP(持続陽圧呼吸療法)とリラグルチドの併用療法が、BMI(肥満度指数)、AHI(無呼吸・低呼吸指数)、平均収縮期血圧を有意に低下させることが示されました。これは、睡眠時無呼吸症候群が代謝や循環器系に悪影響を及ぼし、これらの疾患のリスクを高める可能性を示唆しています。

睡眠時無呼吸症候群のまれな症状とは?

睡眠時無呼吸症候群というと、大きないびきや日中の耐え難い眠気を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、実際には、それ以外にも私たちの体や心に様々な影響を及ぼす可能性があります。

睡眠の質の低下による集中力の低下

睡眠時無呼吸症候群になると、睡眠中に呼吸が何度も止まり、その度に脳が覚醒してしまうため、質の高い睡眠を十分に確保することが難しくなります。

睡眠は、単に脳と体を休ませるためだけのものではなく、日中に得た情報や学習したことを整理し、記憶として定着させるために重要な役割を担っています。

例えば、睡眠は、図書館で借りてきた大量の本を、ジャンルごとに整理したり、重要な部分を抜き出して分かりやすくまとめたりする作業に似ています。しかし、睡眠時無呼吸症候群によってこの作業が妨げられると、脳は常に情報過多の状態となり、効率的に働くことができなくなってしまうのです。

その結果、日中の集中力や注意力、記憶力、判断力などが低下し、仕事や勉強、日常生活に様々な支障をきたすようになります。

例えば、会議中に発言の内容が頭に入ってこなくなったり、簡単な計算ミスが増えたり、人の名前が思い出せなくなったり、以前は簡単にこなせていた作業に時間がかかってしまうなど、様々な場面で困難を感じることが多くなります。

心理的影響:不安やうつの可能性

睡眠時無呼吸症候群は、体だけでなく心にも大きな影を落とす可能性があります。

十分な睡眠が取れない状態が続くと、心は常に緊張状態に置かれ、リラックスすることが難しくなります。また、慢性的な疲労感や倦怠感、意欲の低下などに悩まされ、日常生活で喜びや楽しみを感じにくくなることもあります。

その結果、精神的なバランスを崩しやすく、不安やうつといった心の病気を発症するリスクが高まると考えられています。

例えば、将来に対して漠然とした不安に襲われたり、些細なことでイライラしやすくなったり、気分が落ち込み、何事にも興味を持てなくなったりするなどの症状が現れることがあります。

その他の身体的症状(高血圧や心疾患)

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や心疾患、脳血管疾患などのリスクを高めることも知られています。

睡眠中に呼吸が止まると、体は酸素不足の状態に陥ります。この酸素不足を補おうとして、心臓はより多くの血液を送り出すために、より強い力で拍動しなければなりません。

このような状態が慢性的に続くと、心臓に大きな負担がかかり、高血圧や不整脈、心筋梗塞、狭心症などの心疾患のリスクを高めると考えられます。

また、睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて血圧を上昇させる原因にもなります。

さらに、睡眠時無呼吸症候群によって、脳卒中や認知症のリスクが上昇する可能性も指摘されています。

このように、睡眠時無呼吸症候群は、一見、睡眠中の出来事として軽視されがちですが、実際には、私たちの体と心に大きな負担をかけ、様々な病気のリスクを高める危険因子となり得るのです。

ご自身やご家族にいびきや呼吸停止などの症状が見られる場合は、決して軽視せず、早めに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けることが重要です。

自己診断と受診のポイント

「あれ?もしかして、自分も睡眠時無呼吸症候群かも…」そう思ったあなたは、とても重要な一歩を踏み出しました。

睡眠時無呼吸症候群は、静かに、そして確実に、私たちの健康を蝕む病気です。

自覚症状が少ないまま進行することも多いため、早期発見、早期治療のためにも、「もしかしたら…」というあなたの心の声を、どうか無視しないでください。

自己チェックリストの作成方法

まずは、ご自身の状態を簡単にチェックしてみましょう。インターネットで「睡眠時無呼吸症候群 チェックリスト」と検索すると、様々な医療機関や機関が提供しているセルフチェックツールを見つけることができます。

これらのチェックリストは、多くの場合、睡眠時無呼吸症候群の典型的な症状に関する質問形式になっています。

例えば、

  • 「いびきをかきますか? それとも、家族から指摘されたことがありますか?」
  • 「日中、我慢できないほどの強い眠気に襲われることはありませんか?」
  • 「夜中に何度も目が覚めてしまうことはありませんか?」
  • 「朝起きた時、頭が重く感じたり、スッキリとしないことはありませんか?」

このような質問に、正直に「はい」または「いいえ」で答えていくことで、ご自身の状態を客観的に把握することができます。

しかし、ここで注意していただきたいのは、あくまでもこれは簡易的なチェックであり、自己診断ではないということです。

チェックの結果がどうであれ、気になる症状がある場合は、自己判断せずに、必ず医療機関を受診するようにしてください。

受診時に知っておくべき症状の記録

いざ病院を受診するとなると、「先生に何を話せばいいのかな…」と不安に感じる方もいるかもしれません。

そこで、診察を受ける前に、ご自身の症状や状況について、簡単にメモ書きしておくことをおすすめします。

  • 症状はいつ頃から始まりましたか?
  • どのくらいの頻度で、どのような時に症状が現れますか?
  • 睡眠時間はどのくらいですか? 睡眠の質は良いと感じますか?
  • 日中の生活習慣で、何か気になることはありませんか?(例:飲酒、喫煙、カフェインの摂取など)
  • 現在、他に治療中の病気や、服用中の薬はありますか?

これらの情報を事前に整理しておくことで、診察時にスムーズに医師に伝えることができます。

睡眠時無呼吸症候群は、決して他人事ではありません。

「ちょっと睡眠不足気味かな」「疲れているだけかも」と安易に考えず、ご自身の体と心のサインに耳を傾け、医療機関を受診しましょう。

当院では睡眠時無呼吸症候群の簡易スクリーニング検査をすることができます。お気軽にお声掛けください。

参考文献

  • Jiang W, Li W, Cheng J, Li W, Cheng F. Efficacy and safety of liraglutide in patients with type 2 diabetes mellitus and severe obstructive sleep apnea. Sleep & breathing = Schlaf & Atmung 27, no. 5 (2023): 1687-1694.