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胃がん治療ってどうするの?

[2022.09.06]

わだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

今回のテーマは胃がんの治療についてです。

胃がんの治療は大きく内科的治療、外科的治療に分けられますが、内科的治療、中でも内視鏡治療に絞ってお話させていただきます。

現在行われている胃がんの内視鏡治療はESD(Endoscopic Submucosal Dissection:内視鏡的粘膜下層剥離術)と呼ばれ、2006年に保険収載され、現在国内で広く行われている標準治療です。

それまではEMR(Endoscopic Mucosal Resection:内視鏡的粘膜切除術:Endoscopic Mucosal Resection)という、スネアと呼ばれる金属の輪を病変に引っ掛けて切除していましたが、切除できるサイズに限界があり、病変が分割されて切除されることもありました。そのためがんが残ったりすることで再発のリスクが少なからずありました。

そんなEMRの弱点を克服した治療法がESDです。これから細かく説明していきますが、EMRと比較して病変が一度に切除できることが治療上、診断上の利点となります。

私も現在勤務している大分市医師会立アルメイダ病院をはじめ、これまで勤務してきた病院で数多くのESDの治療に関わってきました。当院ではESD治療は行なっていませんが、苦痛の少ない胃カメラ検査を行なっており、胃がんの発見を行った場合には速やかに連携施設の総合病院へご紹介させていただきます。

それでは胃がんに対するESD治療について詳しく説明させていただきます。

まず胃の構造についてです。胃の壁は内側から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層に分けられます。胃がんは、最も内側にある粘膜層の細胞が何らかの原因(ピロリ菌に関連することがほとんどです)でがん化することで発生し、外側に向かって広がっていきます。

癌が粘膜または粘膜下層にとどまっているものは「早期胃がん」と呼ばれ、ESD治療の適応となります。ただし固有筋層より深く広がっているものは「進行胃がん」と呼ばれ、リンパ節への転移、肺や肝臓などの離れた臓器への転移(遠隔転移)が起こりやすくなり、お腹全体にがん細胞が散布される場合もあります(腹膜播種といいます)。進行胃がんの場合はESD治療は適応外となり、手術や化学療法(抗がん剤治療)を行うことになります。

次に実際の治療の流れについて説明します。

  1. 静脈麻酔(症例によっては全身麻酔で行うこともあります)で眠った状態で行います
  2. 内視鏡(胃カメラ)を挿入し、病変の周囲を囲む様に切除する範囲に印を付けます
  3. 印の周囲の粘膜に薬剤を注入し、粘膜下層(粘膜と筋層の間)を膨らませます
  4. 正常粘膜と切除する粘膜を専用の処置具で切り離し(切開と呼びます)、粘膜下層や筋層を傷付けない様にはがして病変を切除します(剥離と呼びます)

起こりうる合併症としましては主なものとして穿孔や出血、狭窄や麻酔による呼吸抑制、誤嚥性肺炎などがありますが、外科手術と比較して体に与えるダメージが少ないことも大きなメリットの一つです。

最後にESD治療後のスケジュールについて説明させていただきます。

施設毎、また患者様それぞれによって異なり、今回あくまで皆さまにイメージして頂くために記載したものですのでその点はご理解下さい。

・ESD治療の翌日に内視鏡検査を行い、治療後の部位(人工的な潰瘍ができています)から出血がないか確認を行います

・出血がなければ治療後2日頃より食事を再開します

・またESD治療後より胃薬を内服します

・食事再開後問題なければ1週間前後の入院期間になることが多いです

その他、重要なこととしてはESDで切除した病変は顕微鏡を使った組織検査に提出しますが、結果次第では追加で手術が必要となることもあります。

また処置を行わない場合には癌が大きくなって内視鏡的処置が出来なくなり、手術が必要になる場合もあります。

以上、胃がんの治療について簡単に解説させていただきました。

わだ内科・胃と腸クリニックではこれまでの経験を生かし、胃がんの早期発見そして早期治療につなげられます様に診療を行なっていきます。

特にこれまで胃カメラ検査を一度も受けたことがない方、ピロリ菌と言われたが放置されている方、ピロリ菌の除菌治療後の方で定期的な検査を受けられていない方は内視鏡検査をおすすめしますので、お気軽にお声掛けいただければと思います。

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