胆管結石の治療ってどうするの?
わだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。
本日は昨日に引き続き、病院で行う治療について説明させていただきます。
治療については施設毎、また患者様それぞれによって異なり、あくまで皆さまにイメージして頂くために記載したものですのでその点はご理解下さい。
今回は胆管結石の治療についてお話させていただきます。
皆さまご存知の方もい多いかと思いますが胆のうの中にある結石を胆石と呼びます。その胆石が肝臓から十二指腸へ胆汁の通り道である胆管に落ち込んだものを今回のテーマである胆管結石と呼びます。また胆石が胆のうに炎症を起こした場合を胆のう炎と言い、原則手術が必要になりますが、胆管結石などによって胆管が詰まり炎症を起こした場合を胆管炎と言い、ERCP(Endoscopic retrograde cholangiopancreatography:内視鏡的逆行性胆道膵管造影)という内視鏡検査、治療が必要になります。
当院でも受けていただく様な通常の胃カメラ検査では直視鏡といって内視鏡の先端にレンズが付いたものを使用しますが、ERCPではレンズが側面に付いた特殊な内視鏡(側視鏡と呼びます)を口から挿入します。
次に実際の治療の流れについて説明します。
- 鎮静剤および鎮痛剤の注射を行い、検査を開始します。
- 胆管の出口である十二指腸の乳頭部という部位まで内視鏡を進ませ、ガイドワイヤーという細いワイヤーを胆管に通した上で造影用のカテーテルを挿入します。
- 胆管挿管に成功した後に高周波の電気メスを用いてEST(Endoscopic sphincterotomy:内視鏡的乳頭括約筋切開術)という乳頭の切開を行います。これは乳頭は針の穴程度の細さしかなく、切開を行わないと結石の除去などの処置が行えないためです。 場合によってはEPBD(Endoscopic papillary balloon dilatation:内視鏡的乳頭バルーン拡張術)という拡張用のカテーテルを用いて乳頭の拡張を行います。
- その後バスケットカテーテルという網目状の器具やバルーンカテーテルという風船状の器具を用いて胆管内の結石を除去します。
- ただし結石が大きい場合にはクラッシャーカテーテルという結石を粉々に砕く専用のカテーテルを用いる場合もあります。
- 最後にステントというプラスチック状のチューブを胆管内に留置し終了します。
*胆管炎が起きている際には、結石除去などの処置により胆管に負担が掛かることがあるので、乳頭の切開術と胆管ステントの留置のみ行い、後日再度ERCPを行う場合もあります。
また結石が多数の場合など、複数回のERCPが必要になることもあります。
検査時間は基本的に30-60分程度ですが、手技の内容によっては時間を要する場合もあります。また胆管への挿入が困難なケースもありその場合は日を改めて行うか、体表からエコーを用いて胆のうもしくは胆管を穿刺する方法や超音波内視鏡を用いて胆管の穿刺を行う場合もあります。
合併症としては最も重要なものとして、膵炎があります。胆管と膵管(膵臓でつくられた膵液を十二指腸まで運ぶ管)は十二指腸の壁の内部で共通の管として合流しており、機械的刺激による乳頭部の腫脹や膵管への負担などにより発症するとされています。時に重症化し、入院期間が長期化することもあります。
以上、胆管結石の治療について簡単に解説させていただきました。
私の現勤務先の大分市医師会立アルメイダ病院は年間400-500例と大分県でもトップクラスの数のERCP治療を行なっています。
わだ内科・胃と腸クリニックではこれまでの経験を生かし、胆管結石による胆管炎をきたした場合に早期に治療につなげられます様に診療を行なっていきます。
また胆管結石は胆のう結石が、胆管内に落下することで起こる病気ですので、これまで一度も腹部エコー検査を受けられていない方や以前胆のう結石と言われたことがある方などはお気軽にお声掛けいただければと思います。