頸部エコーでわかることは?プラークについて説明

大分県大分市のわだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

「血管年齢」という言葉、耳にしたことがありますか? 実年齢よりも高いと、少し不安になりますよね。 でも、安心してください。 血管の状態を正しく知ることは、将来の病気の予防に役立つんです。

今回は、首の血管の状態をチェックできる「頸部エコー検査」について詳しく解説します。

この検査でわかること、そして、あなたの血管を守るためのヒントをご紹介します。

あなたの血管年齢は、実年齢と比べてどうですか?

頸部エコー検査の基本と目的

健康診断で「血管年齢」という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか? 血管年齢が実年齢よりも高いと、少し不安になりますよね。 しかし、血管の状態を正しく知ることは、将来の病気を予防する上で非常に大切です。 頸部エコー検査は、まさに首の血管の状態をチェックできる検査なのです。今回は、この頸部エコー検査について詳しく説明します。

頸部エコー検査とは何か

頸部エコー検査とは、超音波を使って首の血管の様子を調べる検査です。体に害のない超音波を首に当て、血管の壁の厚さや血管の中の血流を調べます。レントゲン検査のように放射線を使わないので、妊娠中の方でも安心して受けることができます。

この検査で主に調べるのは「頸動脈」という血管です。 頸動脈は心臓から脳へ血液を送る大切な血管で、左右に1本ずつあります。 ちょうど、庭に水をまくためのホースのような役割を果たしています。 ホースが古くなって細くなると、水の流れが悪くなってしまいますよね。 血管も同じように、動脈硬化などで狭くなったり詰まったりすると、脳への血液の流れが悪くなり、脳卒中になるリスクが高まります。 頸部エコー検査は、この頸動脈の状態を詳しくチェックすることができるのです。

頸動脈には内膜-中膜複合体厚(IMT)と呼ばれる部分があります。これは血管の壁の厚さを表す指標で、この厚さが増加すると動脈硬化が進行しているサインと捉えられます。IMTの増加は、一過性脳虚血発作や脳卒中のリスク増加と関連していることが知られています。一過性脳虚血発作とは、脳の血管が一時的に詰まり、手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らないなどの症状が一時的に現れる病気です。

例えば、私のクリニックにいらした70代の男性は、健康診断で血管年齢が高いと指摘され、心配になって頸部エコー検査を受けにいらっしゃいました。検査の結果、IMTの増加とプラークが確認されました。幸いにも、まだ脳卒中の症状は出ていませんでしたが、早期発見によって適切な治療と生活習慣の改善に取り組むことができました。

検査を受ける目的とメリット

頸部エコー検査を受ける一番の目的は、脳卒中を予防することです。 脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりする病気で、後遺症が残ることもあります。 脳卒中は、国内で年間約12万人が亡くなっている、命に関わる危険な病気です。 日本では脳卒中は死亡原因の第4位であり、寝たきりになる原因の第1位です。 頸部エコー検査では、脳卒中の原因となる頸動脈の動脈硬化やプラークの有無を早期に発見することができます。

早期発見のメリットは、生活習慣の改善や薬物療法などで、プラークの進行を抑えたり、脳卒中を予防できる可能性が高まることです。 また、定期的な検査によって、血管の状態を継続的にモニタリングすることができます。

メリット説明
脳卒中の早期発見頸動脈の状態を調べることで、脳卒中のリスクを早期に把握できます。
痛みがなく安全超音波を使うので、痛みや被ばくの心配がありません。
繰り返し検査可能体への負担が少ないため、定期的に検査を受けて経過観察ができます。
予防につなげられる検査結果に基づいて、生活習慣の改善や治療方針を立てることができます。

検査の流れと所要時間

頸部エコー検査は、とても簡単な検査です。検査着に着替える必要もなく、ベッドに横になるだけで受けられます。 医師または検査技師が、ゼリーを塗った機械を首に当てて、超音波で血管の様子を調べます。 検査時間は5分〜10分程度と短く、痛みもありません。

検査の流れは以下の通りです。

  1. ベッドに横になる
  2. 首にゼリーを塗る
  3. 超音波の機械を首に当てる
  4. 検査終了

検査後は、すぐに日常生活に戻ることができます。食事制限なども特にありません。検査結果は、(当院では)検査後すぐに説明可能です。もし異常が見つかった場合は、適切な治療や生活指導を受けることができます。

検査自体は簡単ですが、得られる情報は非常に貴重です。 頸動脈の状態を知ることで、ご自身の血管の健康状態を理解し、将来の脳卒中リスクを減らすための対策を立てることができます。

頸動脈プラークの理解とリスク

血管も私たちと同じように歳をとります。若い頃は弾力があり、しなやかだった血管も、年齢を重ねるにつれて硬く、もろくなっていくのです。そして、血管の壁にはプラークと呼ばれる脂肪などの塊が溜まることがあります。これは、ちょうど水道管に水垢が溜まるようなイメージです。特に、脳に血液を送る大切な血管である頸動脈にプラークができると、脳卒中などのリスクが高まる可能性があります。

頸動脈プラークとは?その定義と形態

頸動脈プラークとは、頸動脈の壁にできる脂肪やコレステロール、カルシウムなどが混ざった塊です。プラークは血管の内壁にこぶのように盛り上がり、血管を狭くしてしまいます。

プラークの形態は様々で、大きく分けて「安定プラーク」と「不安定プラーク」の2種類があります。安定プラークは表面が滑らかで硬く、比較的安定しています。例えるなら、しっかりと固定されたレンガのようなイメージです。一方、不安定プラークは表面が凸凹していて柔らかく、破れやすいという特徴があります。これは、まるで崩れやすい砂山のようなものです。少しの刺激で崩れてしまう危険性があります。

プラークの種類特徴危険性
安定プラーク表面が滑らかで硬い比較的低い
不安定プラーク表面が凸凹で柔らかい高い

プラークの原因と健康への影響

プラークができる原因は、加齢、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、運動不足など、多岐にわたります。これらの要因が重なると、プラークができやすくなり、進行も早くなります。

プラークは初期段階では自覚症状がないことが多く、気づかないうちに血管が狭くなり、脳への血流が滞ることがあります。これは、蛇口を少しずつ閉めていくように、徐々に脳への血液供給が不足していくイメージです。脳への血流が不足すると、脳梗塞や一過性脳虚血発作などの脳卒中を引き起こすリスクが高まります。一過性脳虚血発作とは、脳の血管が一時的に詰まり、手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らないなどの症状が一時的に現れ、その後自然に回復する病気です。脳卒中は、国内で年間約12万人が亡くなっている、命に関わる危険な病気であり、日本における死亡原因の第4位、寝たきりになる原因の第1位です。

プラークの影響を最小限に抑え、健康な血管を維持するためには、生活習慣の改善が重要です。バランスの取れた食事を心がけ、適度な運動を習慣づけること、そして禁煙することが大切です。頸動脈では、内膜中膜複合体厚(IMT)の増加、プラークまたは狭窄の存在は、一過性脳虚血発作または脳卒中のリスク増加と関連していることが報告されています。

脳卒中や心臓病との関連性

頸動脈プラークは、脳卒中と密接に関連しています。プラークが破裂すると、血液のかたまり(血栓)ができて脳の血管を詰まらせ、脳梗塞を引き起こすことがあります。また、プラークによって血管が狭くなると、脳への血流が不足し、これも脳梗塞のリスクを高めます。脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳細胞が酸素や栄養を受け取れなくなり、脳の機能が損なわれる病気です。

頸動脈は心臓から脳へ血液を送る重要な血管であるため、頸動脈プラークは心臓病にも影響を与える可能性があります。頸動脈プラークがあると心臓に負担がかかり、狭心症や心筋梗塞などのリスクが高まることが懸念されます。狭心症は、心臓を取り巻く冠動脈が狭くなることで、心臓の筋肉に十分な酸素が供給されず、胸の痛みや圧迫感などの症状が現れる病気です。心筋梗塞は、冠動脈が完全に詰まることで、心臓の筋肉の一部が壊死してしまう病気です。

頸動脈の状態を調べる頸動脈超音波検査は、プラークの有無や状態を評価するための簡便で安全な検査です。この検査を受けることで、脳卒中や心臓病の予防につなげることができます。ご自身の血管の健康状態を把握し、将来の病気を予防するためにも、頸動脈エコー検査を検討してみてはいかがでしょうか。

頸部エコー検査の費用と受診方法

健康診断などで「頸動脈にプラークがある」と指摘されたり、脳卒中が心配で検査を受けたいと思ったり、理由は様々だと思います。今回は、頸部エコー検査を受けるにあたって気になる費用や、検査を受けられる場所、受診方法についてご説明します。検査を受ける前に知っておくと安心できる情報ですので、ぜひ参考にしてください。

検査費用の目安と保険適用について

頸部エコー検査の費用は、医療機関や検査内容によって異なりますが、おおむね3,000円から8,000円程度が目安です。検査費用には、医師の診察料や検査機器の使用料などが含まれます。

頸部エコー検査は、脳卒中のリスク評価など、医学的に必要な場合は保険適用となります。例えば、健康診断で指摘された場合や、医師が必要と判断した場合には、保険が適用され、自己負担額は1割~3割負担となります。3割負担の方ですと、1,000円~2,500円程度になることが多いです。

先日、70代男性の患者さんが、健康診断で血管年齢が高いと指摘され、心配で来院されました。問診で脳卒中のリスク因子である高血圧症があることがわかり、保険適用で頸部エコー検査を行いました。検査の結果、動脈硬化の初期段階であることがわかり、生活指導と投薬治療を開始しました。

一方、健康診断や人間ドックなど、自費診療となる場合もあります。40代女性の患者さんは、特に症状はありませんでしたが、ご家族に脳卒中の既往歴があり、自費で頸部エコー検査を受けられました。幸い異常はありませんでしたが、ご自身の血管の状態を知ることで安心できたようでした。

このように、費用や保険適用についてはケースバイケースですので、事前に医療機関に確認することをおすすめします。

状況保険適用おおよその自己負担額(3割負担の場合)
脳卒中のリスク評価のため適用900円~2,400円程度
健康診断(自費)適用外3,000円~8,000円程度

頸動脈では、内膜中膜複合体厚(IMT)の増加、プラークまたは狭窄の存在は、一過性脳虚血発作または脳卒中のリスク増加と関連していることが報告されています。IMTとは、簡単に言うと血管の壁の厚さを表す指標です。このIMTが増加するということは、血管の老化が進んでいることを意味します。健康診断などでIMTの増加を指摘された方は、一度頸部エコー検査を受けてみることをお勧めします。

検査前の準備と注意点

頸部エコー検査は、体に負担の少ない検査です。特別な準備は必要ありません。食事制限や服薬制限もありませんので、普段通りに過ごしていただいて大丈夫です。

検査当日は、首元を出しやすい服装で来院するとスムーズです。ハイネックの服やタートルネックの服は避け、襟ぐりの広い服やボタンシャツなどを着用しましょう。アクセサリーやネックレスは、検査の際に外す必要があります。

検査中は、医師や検査技師の指示に従って、じっとしていてください。検査時間は5分~10分程度です。痛みや不快感を感じることはほとんどありません。

当院でももちろん検査可能ですので、お気軽にお声掛け下さい。

まとめ

頸部エコー検査は、超音波を用いて首の血管の状態を調べる検査です。特に、心臓から脳への血液を送る重要な血管である頸動脈の動脈硬化やプラークの有無を調べることで、脳卒中などのリスクを早期に発見することができます。

頸動脈プラークは、血管の壁にできる脂肪やコレステロールなどの塊で、血管を狭くし、脳卒中などのリスクを高めます。プラークは、加齢、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙など様々な要因によって発生します。

頸部エコー検査は、痛みがなく、放射線を使用しない安全な検査です。検査時間は10分程度と短く、特別な準備も必要ありません。健康診断などで「血管年齢が高い」と指摘されたり、脳卒中が心配な方は、一度検査を受けてみることをおすすめします。

参考文献

  1. Murray CSG, Nahar T, Kalashyan H, Becher H, Nanda NC. Ultrasound assessment of carotid arteries: Current concepts, methodologies, diagnostic criteria, and technological advancements. Echocardiography (Mount Kisco, N.Y.) 35, no. 12 (2018): 2079-2091.