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大腸カメラで発見!大腸憩室症とは?

[2024.09.05]

大分県大分市のわだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

大腸カメラで、大腸憩室と診断された方はいらっしゃるでしょうか。あるいは、漠然と「大腸憩室」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません大腸憩室は、実は決して珍しい病気ではありません。自覚症状がないことがほとんどですが、炎症を伴う「大腸憩室炎」や出血を伴う「大腸憩室出血」などの合併症を引き起こす可能性もあります。この記事では、大腸憩室の基礎知識から、症状、診断方法、治療法、予防策まで詳しく解説します。自分の健康を守るためにも、大腸憩室について正しく理解しておきましょう。

大腸憩室の基本情報と発症メカニズム

近年、食生活の変化や高齢化に伴い、「大腸憩室」という言葉を耳にする機会が増えてきました。これは決して他人事ではありません。ご自身やご家族の健康を守るためにも、大腸憩室について正しく理解を深めておくことが大切です。

大腸憩室とは何か

大腸は、私たちが口にしたものが長い道のりを経て、最後に便として排出される器官です。その大腸の壁は、ちょうど自転車のタイヤのチューブのように、内側からの圧力に耐えながら働いています。しかし、加齢や生活習慣の影響などで、そのチューブの一部がポコっと外側に膨らんでしまうことがあります。これが「大腸憩室」です。

大腸内視鏡検査を専門とする医師として、日々多くの患者さんの大腸を観察していますが、40歳を過ぎたあたりから、この小さな膨らみが目立つようになってくる印象があります。特に60歳以上の方では、半数以上に見られるとも言われています。

大腸憩室ができる原因

大腸憩室ができる原因は、まだすべてが解明されたわけではありません。しかし、食生活の欧米化や運動不足、加齢などが深く関わっていると考えられています。

例えば、肉中心で野菜不足の食生活を送っていると、便の量が減り、硬くなってしまいます。すると、大腸は便を押し出すために、より強い力が必要となり、その結果、大腸の壁に負担がかかって憩室ができやすくなると考えられています。これは、固いものを無理やり押し出そうとすると、パイプが膨らんでしまうのと同じイメージです。

また、運動不足も大腸の動きを悪くする一因となります。大腸は蠕動運動という動きによって便を運んでいます。しかし、運動不足になるとこの動きが鈍くなり、便が腸内に滞留しやすくなってしまうのです。さらに、加齢に伴い、大腸の壁も老化し、弾力を失ってしまいます。若い頃は、多少の圧力がかかっても、大腸は柔軟に対応できますが、年齢を重ねるごとに、その力は衰え、憩室ができやすい状態になってしまうのです。

発症リスクが高い人の特徴

大腸憩室は、誰にでも起こりうる病気ですが、特に注意が必要な方がいます。

まず、40歳以上の方は、大腸の老化が始まるため、注意が必要です。若い頃と同じ食生活や運動習慣を続けていると、大腸に負担をかけてしまう可能性があります。また、食生活の欧米化や運動不足、喫煙習慣のある方も、リスクが高いと言えるでしょう。

さらに、ご家族に大腸憩室の方がいる場合は、遺伝的な要因も考えられるため、注意が必要です。遺伝というと、病気は避けられないものと感じるかもしれませんが、生活習慣を改善することで、リスクを減らせる可能性は十分にあります。

大腸憩室は自覚症状がない場合がほとんどです。しかし、時に炎症を伴う「大腸憩室炎」や出血を伴う「大腸憩室出血」などの合併症を引き起こす可能性もあります。ご自身の生活習慣を振り返り、少しでもリスクを感じたら、消化器内科専門医に相談することをおすすめします。

大腸憩室の症状と診断方法

大腸憩室は、初期段階では自覚症状がないことが多く、大腸カメラなどで偶然発見されるケースも少なくありません。

無症状の場合の注意点

大腸憩室は、症状がない「無症候性憩室症」の段階では、治療の必要はありません。

ただし憩室に便や細菌が溜まりやすくなり、炎症を起こしてしまいます。炎症が起こると、突然激しい腹痛や発熱などの症状が現れる「憩室炎」に移行する可能性があります。また、無症状であっても、定期的な検査を受けることをおすすめします。大腸憩室とは関係なく、加齢とともに大腸がんのリスクも高まるため、大腸カメラ検査を受けることで、大腸憩室だけでなく、大腸がんの早期発見・治療にもつながります。

代表的な症状とその症状の詳細

大腸憩室は、多くの場合、無症状ですが、下記のような症状が現れることがあります。

症状 詳細
腹痛 特におへその左側が痛むことが多く、食後や排便時に悪化する傾向があります。
便秘や下痢 便秘や下痢を繰り返すことがあります。
発熱 憩室に炎症が起こると、38度以上の発熱がみられることがあります。
吐き気 症状が進むと、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
血便 まれに、出血を伴うことがあり、便に血が混じることがあります。

これらの症状は、他の消化器疾患でもみられることが多いため、自己判断せず、医療機関を受診することが大切です。

例えば、「お腹が痛い」という症状一つをとっても、その原因は様々です。胃潰瘍や腸炎、便秘など、大腸憩室以外にも考えられる病気はたくさんあります。自己判断で市販薬を服用したり、様子を見たりするのではなく、医療機関を受診し、正しい診断を受けることが重要です。

内視鏡検査を用いた診断方法

大腸憩室の診断には、主に大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)が行われます。大腸カメラ検査では、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内部を直接観察します。

大腸カメラ検査では、大腸の内部を詳しく観察することで、憩室の大きさや数、炎症の有無などを確認することができます。

大腸カメラ検査は、大腸憩室の診断だけでなく、大腸がんの早期発見にも非常に有効な検査です。検査を受けることに不安を感じる方もいるかもしれませんが、医師にご相談の上、安心して検査を受けていただければと思います。

大腸憩室の治療法と予防策

大腸憩室と診断された時、多くの方は「え?私、病気だったの?」と驚かれるかもしれません。なぜなら、大腸憩室は自覚症状がない場合がほとんどだからです。

しかし、安心してください。大腸憩室と診断されても、多くの場合は無症状であるため、ほとんどの場合治療が必要となるわけではありません。

一般的な治療法の選択肢

では、大腸憩室と診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか?

治療法は、合併症の有無によって異なります。

大腸憩室に炎症が起こっている場合は、抗生物質を投与して炎症を抑える治療を行います。

しかし、大量出血などの重篤な合併症を引き起こした場合には、緊急内視鏡による止血術などが必要となることもあります。

食事療法や生活習慣の改善方法

大腸憩室の治療や予防には、薬物療法だけでなく、食事療法や生活習慣の改善も非常に大切です。

特に重要なのは、食物繊維を積極的に摂取することです。

食物繊維は、腸内の善玉菌を増やし、腸の動きを活発にする働きがあります。また、便の量を増やし、柔らかくすることで、排便をスムーズにします。

食物繊維が豊富な食品としては、野菜、果物、海藻、きのこ、豆類などがあります。これらの食品をバランスよく食事に取り入れるようにしましょう。

目標としては、1日あたり25~30gの食物繊維を摂取することです。

また、水分を十分に摂ることも大切です。水分不足になると便が硬くなり、排便が困難になります。目安として、1日に1.5~2リットル程度の水分を摂取するように心がけましょう。

さらに、適度な運動も腸の動きを活発にする効果があります。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。

反対に、喫煙は腸の動きを悪くするだけでなく、大腸憩室の合併症のリスクを高める要因となりますので、禁煙することが望ましいです。

まとめ

大腸憩室は、大腸の壁の一部が外側に膨らむ病気です。40歳以上で多く見られ、食生活の欧米化や運動不足、加齢などが原因と考えられています。初期段階ではほとんど自覚症状がなく、健康診断などで偶然発見されることが多いです。

憩室に便や細菌が溜まり、炎症を起こす「憩室炎」になる可能性があります。憩室炎は、激しい腹痛や発熱などを引き起こし、重症化すると命に関わることもあります。

大腸憩室を予防するためには、食物繊維を多く含む野菜や果物を摂取したり、適度な運動をしたりすることが大切です。また、禁煙も重要です。

当院でも診療日には毎日大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行っています。

ウェブ予約もできますので、お気軽にお声掛けください。

参考文献

  1. Zhao S, Song Y, Wang S, Wang R, Feng Z, Gong A, Yang X, Pan P, Yao D, Zhang J, Zhu Y, Li T, Bi J, Ren X, Tang X, Li Q, Yu D, Zheng J, Song B, Wang P, Chen W, Shang G, Xu Y, Xu P, Lai Y, Xu H, Yang X, Sheng J, Tao Y, Li X, Zhu Y, Zhang X, Shen H, Ma Y, Wang F, Wu L, Wang X, Li Z, Bai Y. Reduced Adenoma Miss Rate With 9-Minute vs 6-Minute Withdrawal Times for Screening Colonoscopy: A Multicenter Randomized Tandem Trial. The American journal of gastroenterology 118, no. 5 (2023): 802-811.
 
 

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