お酒を飲まないのに尿酸値が高い?
大分県大分市のわだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。
あなたは健康診断で「尿酸値が高い」と指摘されたことはありませんか?「別に症状もないし…」と安心していませんか?実は、その高い尿酸値、まるで時限爆弾を抱えているようなものかもしれません。
いつ発作が起きるかわからない不安を抱えるより、原因を理解し、適切に対処することで、安心して毎日を送れるようになりませんか?
2023年の国民健康・栄養調査では、尿酸値が基準値を超える人が増加傾向にあります。放置すると、突然襲ってくる激痛の痛風発作、さらには関節の変形や腎臓病などの深刻な合併症につながる可能性も。
今回は、お酒を飲まないのに尿酸値が高い理由を、遺伝、食生活、ストレス、生活習慣など様々な角度から徹底的に解説します。
あなたは一体、どのリスク要因に当てはまるのでしょうか?今すぐチェックして、健康な未来を手に入れましょう。
尿酸値が高い原因を把握するための重要な要素
健康診断で尿酸値が高いと指摘された時、皆さんはどう感じますか?「特に症状もないし、大丈夫だろう」と軽く考えていませんか?
実は、自覚症状がないまま尿酸値が高い状態が続くと、ある日突然、足の親指の付け根が赤く腫れ上がり、激痛に襲われることがあります。これは痛風発作の典型的な症状です。
尿酸値が高い状態は、まるで時限爆弾を抱えているようなものです。いつ爆発するかわからない不安を抱えながら生活するよりも、原因を把握し、適切な対策を講じることで、安心して毎日を過ごせるようになります。
尿酸値が高くなる原因は一つではなく、遺伝、食生活、ストレス、生活習慣など、様々な要素が複雑に絡み合っています。
遺伝要因と家族歴が尿酸値に与える影響
尿酸値は、体質によって生まれつき高くなりやすい人もいます。これは遺伝的な要因が関係しています。
例えば、ご両親や祖父母など、血縁者に尿酸値が高い人がいる場合、あなたも尿酸値が高くなりやすい体質を受け継いでいる可能性があります。これは、身長や髪の色といった身体的特徴が遺伝するのと同じように、尿酸を作る酵素の働きが活発な体質も遺伝するからです。
私のクリニックにも、親子二代で痛風を患っている患者さんがいらっしゃいます。お父様は50代で痛風を発症し、息子さんも30代で発症しました。息子さんは「まさか自分がこんなに若い年齢で痛風になるとは思わなかった」と驚いていました。このように、家族歴がある方は特に注意が必要です。
遺伝的な要因は変えることができませんが、生活習慣を改善することで尿酸値をコントロールすることは可能です。家族に尿酸値が高い人がいる場合は、将来の健康リスクを意識し、より積極的に生活習慣の改善に取り組むことが重要です。
食生活が尿酸値に及ぼす具体的な影響
毎日の食事は、尿酸値に大きな影響を与えます。プリン体という成分を多く含む食品を食べると、尿酸値が上がりやすくなります。プリン体は、いわしの干物やレバー、エビ、白子などに多く含まれています。
例えば、毎日夕食にプリン体の多い食品をたくさん食べていると、尿酸値は上がりやすくなります。反対に、プリン体の少ない食品を選んで食べることで、尿酸値の上昇を抑えることができます。
果糖を多く含む清涼飲料水やお菓子なども尿酸値を上昇させることが分かっています。清涼飲料水を毎日たくさん飲む習慣のある方は、尿酸値が高くなるリスクがあります。また、最近の研究では、DASH食、地中海食、低プリン食などの食事療法は、尿酸値を下げる効果が限定的であることが示されています。つまり、特定の食品を避けるだけでは不十分で、食事全体のバランスを考える必要があるのです。
食品 | プリン体含有量(目安) |
---|---|
いわしの干物 | とても多い |
レバー | とても多い |
エビ | 多い |
白子 | とても多い |
鶏肉 | 少ない |
豚肉 | 少ない |
野菜 | 少ない |
プリン体だけでなく、肥満も尿酸値を上昇させる要因の一つです。バランスの取れた食生活を心がけ、適正な体重を維持することで、尿酸値をコントロールすることができます。
日常のストレスと生活習慣の関係
ストレスや生活習慣も、尿酸値に影響を与えます。強いストレスを受け続けると、自律神経のバランスが崩れ、尿酸値が上昇しやすくなります。
また、睡眠不足や運動不足も尿酸値を上げる原因になります。例えば、毎日夜遅くまでスマートフォンを見ていて睡眠不足になっていると、尿酸値が高くなる可能性があります。適度な運動は尿酸値を下げる効果があるので、ウォーキングなどの軽い運動を習慣にすることが大切です。
ストレスをうまく発散する方法を見つけることも大切です。趣味に没頭したり、リラックスできる時間を作ることで、ストレスを軽減し、尿酸値のコントロールに繋がります。
尿酸値と痛風の関係性を理解する
健康診断で尿酸値が高いと指摘された時、皆さんはどんな気持ちになるでしょうか?「自覚症状もないし、今回はたまたま高かっただけだろう」と楽観的に考えてしまいがちかもしれません。しかし、尿酸値が高い状態を放置すると、体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
尿酸値と痛風の関係性を正しく理解し、適切な対策を講じることで、こうしたリスクを未然に防ぐことができるのです。
痛風の発症メカニズムと尿酸の役割
私たちの体は、毎日古い細胞を壊し、新しい細胞を作り出す新陳代謝を繰り返しています。この過程で、細胞の核に含まれる「プリン体」という物質が分解され、「尿酸」という老廃物が生成されます。通常、尿酸は腎臓でろ過され、尿として体外に排出されます。
しかし、プリン体の多い食品を過剰に摂取したり、体質的に尿酸が排出されにくい場合、血液中の尿酸値(血清尿酸値)が高くなります。この状態を高尿酸血症といいます。高尿酸血症の状態が続くと、尿酸が針状の結晶となって関節に蓄積し、炎症を引き起こします。これが痛風発作です。
痛風発作は、足の親指の付け根に起こることが多いですが、足首、膝、肘など他の関節にも起こり得ます。発作時の痛みは非常に激しく、「ガラスの破片が関節に刺さったようだ」と表現する患者さんもいます。
高尿酸血症は、痛風発作の主な原因となります。血清尿酸値が7mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。高尿酸血症は自覚症状がないことが多いため、健康診断などで指摘されるまで気づかないケースも少なくありません。
痛風発作の兆候とその対処法
痛風発作は、ある日突然襲ってきます。多くの場合、激しい痛みとともに、関節の腫れ、赤み、熱感が現れます。患部を触ると、焼けるように熱く、少し触れただけでも激痛が走ることもあります。
痛風発作が起きたら、まずは安静にし、患部を冷やしてください。氷水を入れた袋や保冷剤をタオルで包み、患部に当てると効果的です。痛みが強い場合は、市販の鎮痛剤を服用することもできますが、必ず用法・用量を守り、自己判断で長期間服用することは避け、速やかに医療機関を受診してください。
私のクリニックにも、痛風発作を我慢し続け、数日後に来院される患者さんがいます。適切な治療が遅れると、痛みが長引くだけでなく、関節の損傷が進行するリスクも高まります。痛風発作は早期治療が重要です。
尿酸値が高い場合の痛風のリスク
尿酸値が高い状態が続くと、痛風発作のリスクが高まるだけでなく、様々な合併症を引き起こす可能性があります。例えば、関節の変形、腎臓病、尿路結石などが挙げられます。
30代の若い患者さんの中には、「自分はまだ若いから大丈夫」と軽く考えている方もいますが、痛風は年齢に関係なく発症する可能性があります。実際、私のクリニックにも20代で痛風を発症した患者さんがいます。
尿酸値が高いと診断された場合は、医師の指示に従って適切な治療を受け、生活習慣の改善に努めることが大切です。生活習慣の改善には、食事療法、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理などが含まれます。
痛風は、適切な治療と生活習慣の改善によってコントロールできる病気です。放置すると関節が変形したり、腎機能が低下したりするなど、取り返しのつかないことになる場合もあります。「自分は大丈夫」と過信せず、尿酸値が高い状態を放置しないようにしましょう。
尿酸値を管理するための具体的な方法
健康診断で尿酸値が高いと指摘されたら、不安になりますよね。でも、ご安心ください。尿酸値は、生活習慣を少し見直すことでコントロールできるものなのです。食事、運動、定期的な検査など、具体的な方法を一緒に見ていきましょう。
食事療法:避けるべき食品と推奨される食品
尿酸値をコントロールするには、食事の内容がとても重要です。プリン体とは、細胞の核に含まれる物質で、エネルギー源となる一方で、尿酸のもとにもなります。プリン体を多く含む食品を摂りすぎると、尿酸値が上がりやすくなるため注意が必要です。高尿酸血症は、痛風発作の主な原因となります。血清尿酸値が7mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。
以前、私のクリニックにいらっしゃった50代の男性は、毎晩ビールと焼き鳥を食べるのが習慣でした。検査の結果、尿酸値は9mg/dLと高く、まさに高尿酸血症でした。
- 避けるべき食品: プリン体を多く含む代表的な食品は、レバー、ハツ、モツなどの肉類、イワシ、サンマ、カツオなどの魚介類、ビール、白子、魚卵などです。これらの食品は、全く食べてはいけないというわけではありません。しかし、毎日たくさん食べるのは控えましょう。例えば、週に1回程度に減らす、食べる量を半分にするなど、工夫してみましょう。
- 推奨される食品: 尿酸値を下げる効果のある栄養素を含む食品を積極的に摂りましょう。野菜類(ほうれん草、小松菜など)、果物類(バナナ、みかんなど)、海藻類(わかめ、昆布など)、乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)がおすすめです。これらの食品は、尿酸の排泄を促したり、尿酸の生成を抑えたりする効果が期待できます。バランスの良い食事を心がけることが大切です。
食事療法は尿酸値のコントロールに役立ちますが、それだけで尿酸値を正常値に保つのは難しい場合もあります。なぜなら、食事以外の要因も尿酸値に影響を与えるからです。
効果的な運動方法と生活習慣改善策
適度な運動は、尿酸値を下げるだけでなく、肥満の予防やストレス解消にも効果的です。激しい運動はかえって尿酸値を上げてしまうことがあるので、ウォーキングや軽いジョギングなど、無理なく続けられる運動を選びましょう。1日30分程度のウォーキングを週に3回行うだけでも、十分な効果が期待できます。
水分をこまめに摂ることも大切です。尿酸は尿と一緒に排出されるため、1日に2リットル程度の水分を摂るように心がけましょう。お茶や水だけでなく、野菜ジュースなども水分補給に役立ちます。
また、質の良い睡眠も重要です。睡眠不足はストレスを溜め込み、尿酸値を上昇させる原因になります。毎日7時間程度の睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムを送りましょう。
尿酸値を下げるための定期検査と医療機関の選び方
尿酸値をコントロールするためには、定期的な検査が必要です。健康診断などで尿酸値が高いと指摘された場合は、医療機関を受診し、医師の指示に従って検査と治療を受けましょう。
まとめ
今回は、健康診断で尿酸値が高いと指摘された場合の対応について解説しました。尿酸値が高い原因は遺伝、食生活、ストレス、生活習慣など多岐に渡り、それらが複雑に絡み合っているため、一概に特定できません。
特にプリン体が多い食品(レバー、イワシなど)の過剰摂取や、果糖の多い清涼飲料水の飲みすぎは尿酸値を上昇させる要因となります。反対に、野菜、果物、海藻類などの摂取は尿酸値の上昇抑制に繋がります。また、肥満やストレス、睡眠不足、運動不足も尿酸値に悪影響を及ぼします。
尿酸値が高い状態を放置すると、痛風発作を引き起こす可能性があります。痛風発作は激しい痛みを伴うため、早期発見と適切な治療が重要です。痛風発作が起きた場合は、患部を冷やし、鎮痛剤を服用し、速やかに医療機関を受診しましょう。
尿酸値のコントロールには、食事療法、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理といった生活習慣の改善が不可欠です。定期的な検査を行い、必要に応じて医師の指導の下、適切な治療を受けることが重要です。 「自分は大丈夫」と安易に考えず、健康診断の結果を真剣に受け止め、健康管理に努めることが大切です。
参考文献
- Danve A, Sehra ST, Neogi T. Role of diet in hyperuricemia and gout. Best practice & research. Clinical rheumatology 35, no. 4 (2021): 101723.