帯状疱疹

80歳までに3人に1人が経験すると言われる「帯状疱疹」。ピリピリとした痛みや赤い発疹といった症状だけでなく、後遺症として慢性的な痛みが残ることも。実はこれ、子供の頃にかかった水ぼうそうと同じウイルスが原因で起こるのです。 知らないうちに潜伏しているウイルスが、免疫力の低下と共に牙を剥く… あなたも例外ではありません。

水ぼうそう経験者なら誰しもが帯状疱疹のリスクを抱えていることをご存知ですか? 実は、水ぼうそうのウイルスは体内に潜伏し続け、加齢やストレスで免疫力が低下すると帯状疱疹として再活性化するのです。 80歳までに約3人に1人が発症すると言われており、決して他人事ではありません。 発症すると、ピリピリとした痛みや赤い発疹が現れ、治った後も痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」に悩まされるケースも。 この記事では、帯状疱疹の予防に有効なワクチン接種についても詳しく解説します。 早期の対策で、痛みと不安から解放されましょう。

帯状疱疹を理解する3つのポイント

帯状疱疹は、皮膚にピリピリとした痛みや赤い発疹が現れる病気です。80歳までに約3人に1人が経験すると言われており、決して珍しい病気ではありません。実は、子供の頃にかかった水ぼうそうと同じウイルスが原因で起こります。

帯状疱疹とは?原因となるウイルスや感染経路

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスというウイルスによって引き起こされます。このウイルスに初めて感染すると水ぼうそうを発症します。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内の神経節にひっそりと潜伏し続けます。神経節とは、神経細胞が集まっている場所で、ウイルスにとって隠れ家のような場所です。

加齢やストレス、疲労、他の病気などによって免疫力が低下すると、この潜伏していたウイルスが再び活性化し、帯状疱疹として発症します。免疫力は、私たちの体を守る防御システムのようなものです。このシステムが弱まると、ウイルスが活動を始めやすくなるのです。

水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうの患者さんから他の人へ感染します。帯状疱疹を発症している人からも、水ぼうそうにかかったことのない人にウイルスが感染する可能性はありますが、水ぼうそうに比べて感染力は低いと考えられています。帯状疱疹を発症した人が、他の人に直接帯状疱疹をうつすことはありません。

例えば、アジア太平洋地域では、免疫力が低下している患者さんや自己免疫疾患の患者さんの場合、帯状疱疹やその合併症である帯状疱疹後神経痛、眼帯状疱疹などのリスクが高いという研究結果が報告されています。自己免疫疾患とは、自分の免疫システムが自分の体を攻撃してしまう病気です。

帯状疱疹の症状:初期症状から皮膚症状、神経痛まで

帯状疱疹の初期症状は、体の片側の皮膚にピリピリと刺すような痛みやかゆみ、知覚過敏などです。知覚過敏とは、通常では痛みを感じないような刺激でも痛みを感じてしまう状態です。例えば、服が軽く触れただけでもチクチクとした痛みを感じることがあります。

その後、赤い発疹が現れ、水ぶくれへと変化していきます。これらの皮膚症状は、通常、体の片側だけに現れ、神経の走行に沿って帯状に分布するのが特徴です。まるで赤い帯のように見えることから、「帯状疱疹」という名前が付けられています。発疹は痛みを伴うことが多く、衣服が触れるだけでも強い痛みを感じる場合があります。

帯状疱疹の合併症:帯状疱疹後神経痛のリスクと重症化

帯状疱疹の最も一般的な合併症は、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。これは、帯状疱疹の皮膚症状が治まった後も、痛みが数ヶ月から数年続く状態です。まるで痛みの幽霊にとりつかれたように、発疹が消えても痛みが続いてしまうのです。

帯状疱疹を発症した人の10~50%にPHNが発生すると言われており、特に高齢者や、帯状疱疹発症時の痛みが強かった人、皮膚病変が広範囲に及んだ人に発生しやすい傾向があります。PHNは、日常生活に大きな支障をきたす場合があり、QOL(生活の質)の低下につながる可能性があります。例えば、痛みのために眠れなかったり、仕事や家事に集中できなかったりするなど、生活のさまざまな場面に影響を及ぼします。

帯状疱疹の治療と予防

帯状疱疹は、ピリピリとした痛みや赤い発疹、水ぶくれといった皮膚症状が現れる病気です。80歳までに約3人に1人が経験すると言われており、決して珍しい病気ではありません。後遺症として、帯状疱疹後神経痛と呼ばれる慢性的な痛みが残ってしまうこともあります。そのため、早期の治療と予防が非常に重要です。ここでは、帯状疱疹の治療法と予防法について、わかりやすく解説します。

帯状疱疹の治療法:抗ウイルス薬や痛み止め

帯状疱疹の治療では、抗ウイルス薬が中心的な役割を果たします。抗ウイルス薬は、水痘・帯状疱疹ウイルスが増殖するのを抑え、症状の悪化を防ぎ、回復を早めます。発症から72時間以内に治療を開始することが理想的です。早期に治療を開始することで、皮膚症状の改善だけでなく、帯状疱疹後神経痛などの合併症のリスク軽減も期待できます。

抗ウイルス薬には、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどがあり、通常は内服薬として処方されます。これらの薬剤はウイルスのDNAポリメラーゼという酵素の働きを阻害することで、ウイルスの複製を抑制します。

強い痛みを伴うことが多い帯状疱疹では、痛みを抑えるための鎮痛薬も併用します。痛みの程度は患者さんによって大きく異なり、日常生活に支障が出るほどの激痛を経験する方もいます。痛みを我慢せず、医師に相談し、適切な鎮痛薬を処方してもらうことが大切です。場合によっては、神経ブロックなどの治療を行うこともあります。神経ブロックとは、痛みを伝達する神経に局所麻酔薬などを注射し、痛みを遮断する治療法です。

帯状疱疹の予防法:ワクチン接種でリスク軽減

帯状疱疹は、子供の頃にかかった水ぼうそうと同じウイルス、つまり水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされます。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内の神経節に潜伏し続け、免疫力が低下したときに帯状疱疹として再活性化します。

帯状疱疹の予防には、ワクチン接種が有効です。ワクチン接種によって、帯状疱疹の発症リスクそのものを減らすことができ、発症した場合でも症状が軽くなる傾向があります。また、帯状疱疹後神経痛の発症リスクも低下させることが報告されています。

帯状疱疹ワクチンには、不活化ワクチンと弱毒生ワクチンがあります。2020年からは、より高い予防効果が期待できる不活化ワクチンであるシングリックスが使用されています。シングリックスは2回の接種が必要です。

高齢者や免疫力が低下している方でも安全に接種できる不活化ワクチンは、帯状疱疹後神経痛などの合併症のリスクも軽減できるため、積極的に接種を検討する価値があります。特に、50歳以上の方や基礎疾患のある方は、ワクチン接種について医師に相談することをおすすめします。

水痘・帯状疱疹ウイルスは、神経節に潜伏感染し、再活性化することで、帯状疱疹の皮膚症状や帯状疱疹後神経痛だけでなく、血管障害、脳卒中、消化器系の症状など、さまざまな疾患の潜在的な病因となる可能性が示唆されています。

帯状疱疹ワクチン:シングリックスについて

帯状疱疹は、体の片側にピリピリとした痛みや赤い発疹が現れる病気です。原因は、子供の頃にかかった水ぼうそうと同じウイルスです。このウイルスは、水ぼうそうが治った後も体の中に潜伏し、加齢やストレスなどで免疫力が低下すると再び活動を始めて帯状疱疹を引き起こすことがあります。帯状疱疹は、痛みだけでなく、皮膚の症状が治まった後も痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」という後遺症を残す可能性があります。ワクチン接種で発症リスクを減らすことができるため、検討をおすすめします。

帯状疱疹ワクチンの種類と特徴:シングリックスとゾスタバックス

帯状疱疹の予防に有効なワクチンは、大きく分けて2種類あります。1つは、シングリックスと呼ばれる不活化ワクチンです。もう1つは、水痘ワクチン(弱毒生ワクチン)で、水ぼうそうの予防にも使われています。

シングリックスは、ウイルスの成分の一部を用いて作られたワクチンです。体内でウイルスが増殖することはありません。2回接種することで、高い予防効果が得られます。副反応として、注射部位の痛みや腫れなどがみられることがありますが、通常は数日で治まります。

水痘ワクチンは、弱毒化した生きたウイルスを用いて作られたワクチンです。1回の接種で効果を発揮しますが、シングリックスと比較すると予防効果はやや劣ります。副反応として、注射部位の発赤やかゆみ、発熱などがみられることがあります。

ワクチン名種類接種回数
シングリックス不活化ワクチン2回
水痘ワクチン弱毒生ワクチン1回

シングリックスは、帯状疱疹の予防効果が水痘ワクチンよりも高く、長期的な効果も期待できます。費用は水痘ワクチンよりも高額ですが、帯状疱疹後神経痛の予防効果も高いことから、費用対効果を考えると、シングリックスを選択肢に入れる価値があるでしょう。

帯状疱疹ワクチンの効果と副作用:安全性と有効性

シングリックスは、臨床試験で高い有効性と安全性が確認されています。50歳以上の方を対象とした大規模な臨床試験では、帯状疱疹の発症リスクを90%以上抑制することが示されました。これは、10人中9人は帯状疱疹の発症を防ぐことができた、という結果です。また、帯状疱疹後神経痛の発症リスクも70%以上減少させることが示されています。

副反応としては、注射部位の痛み、赤み、腫れなどが報告されています。その他、頭痛、倦怠感、筋肉痛などがみられることもありますが、これらの副反応は一時的なもので、ほとんどの場合数日以内に軽快します。

水痘ワクチンは、帯状疱疹の発症リスクを約50%減少させる効果があります。副反応としては、注射部位の発赤やかゆみ、発熱などが報告されています。

高齢者や持病のある方でも、シングリックスは安全に接種できます。ただし、免疫不全の方や妊娠中の方などは接種できない場合があります。

帯状疱疹ワクチンの接種費用と対象者

シングリックスの接種費用は、1回あたり約22,000円です。2回接種が必要なので、合計で約44,000円になります。シングリックスは、2025年度から定期接種となり、公費助成の対象となりました。助成額は自治体によって異なり、自己負担額は数千円程度になる場合もあります。

水痘ワクチンも公費助成の対象です。費用や助成内容については、お住まいの自治体や当院にお問い合わせください。

わだ内科・胃と腸クリニックでのワクチン接種について:予約方法

わだ内科・胃と腸クリニックでは、帯状疱疹ワクチンの接種を行っています。ご予約は、お電話にて承っています。

まとめ

帯状疱疹は、ありふれたウイルス感染症で、80歳までに約3人に1人が経験すると言われています。子供の頃の水ぼうそうウイルスが再活性化することで発症し、皮膚の痛みや発疹、水ぶくれが現れます。後遺症として神経痛が残ることもあり、早期の治療と予防が大切です。治療は抗ウイルス薬と鎮痛薬が用いられ、予防にはワクチン接種が有効です。ワクチンにはシングリックスと水痘ワクチンがあり、シングリックスはより高い予防効果が期待できます。50歳以上の方や基礎疾患のある方は、ワクチン接種について医師に相談してみましょう。帯状疱疹かも?と思ったら、早めに医療機関を受診し、適切なケアを受けることが大切です。

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