鼻から打つインフルエンザワクチン「フルミスト」を導入しました!
フルミストとは?従来の注射型ワクチンとの違い
フルミストは、注射を使わずに鼻の粘膜に直接スプレーするインフルエンザワクチンです。針を刺す痛みがないため、予防接種への抵抗感が大きい方にとって、非常に受けやすい方法です。
従来の注射型インフルエンザワクチンとは、いくつか大きな違いがあります。注射型ワクチンが「不活化ワクチン」と呼ばれる、ウイルスを完全に死滅させた成分から作られているのに対し、フルミストは「生ワクチン」に分類されます。生ワクチンとは、インフルエンザウイルスを弱毒化し、生きたまま用いるワクチンのことです。
これらのワクチンの主な違いは、以下の表にまとめられます。
項目 | フルミスト(生ワクチン) | 従来の注射型ワクチン(不活化ワクチン) |
---|---|---|
投与方法 | 鼻腔内(鼻にスプレーのように吸入) | 注射(筋肉内や皮下注射) |
ワクチンの種類 | 生きたウイルスを弱毒化したもの(生ワクチン) | ウイルスのごく一部や完全に死滅させたもの |
免疫のつき方 | 自然感染に近い免疫(粘膜免疫と全身免疫) | 主に全身免疫(血液中の抗体) |
痛みの有無 | なし | あり(注射の痛み) |
効果発現 | 一般的に接種後、約1~2週間 | 一般的に接種後、約2週間 |
接種回数 | 1回 | 1回または2回 |
フルミストが体に入ると、弱毒化されたウイルスが鼻の粘膜で増殖します。このプロセスが、まるで自然にインフルエンザにかかったときのように、体の中で免疫反応を引き起こします。特に注目すべきは、インフルエンザウイルスが最初に侵入する鼻やのどの「粘膜」にも免疫(粘膜免疫)がつくことです。これは、注射型ワクチンでは得られにくいフルミストの大きな特徴の一つです。全身の免疫だけでなく、侵入経路での防御力を高めることで、インフルエンザの発症をより効果的に防ぐことが期待されます。
フルミストの費用、当院での予約・接種の流れ
フルミストの接種は、全額自己負担となる自由診療でのご提供となりますので、あらかじめご理解とご了承をお願いいたします。
一般的な注射型インフルエンザワクチンとは料金体系が異なりますので、ご注意ください。
接種費用は8,800円/回(税込み)となっております。*2025年10月現在
【当院でのフルミスト予約・接種の流れ】
当院では、患者様がスムーズにフルミストを接種できるよう、以下の手順でご案内しております。
- ご予約
- フルミストは、通常のインフルエンザワクチンとは異なり、在庫に限りがあるため、事前の予約が必須となります。
- お電話または直接窓口でご予約をお願いいたします。
- ご予約の際に、接種対象年齢や禁忌事項について簡単にご確認させていただきます。
- 適切な在庫管理のため、ご理解とご協力をお願いいたします。
- ご来院
- ご予約の日時に、保険証(身分確認のため)や母子手帳などをご持参の上、当院までお越しください。
- 時間に余裕を持ってお越しいただくことをおすすめします。
- 問診票の記入
- 受付にて、フルミスト接種専用の問診票をお渡しいたします。
- 現在の体調、既往歴(過去の病気)、アレルギーの有無、服用中の薬などについて、漏れなく詳しくご記入ください。
- 患者様の安全な接種のために、正確な情報提供が非常に重要です。
- 医師による診察
- 問診票の内容を基に、医師が患者様の体調を確認いたします。
- フルミストの接種が可能かどうかを慎重に判断いたします。
- ご不明な点や不安なことがあれば、遠慮なく医師にご質問ください。納得して接種を受けていただくことが大切です。
- ワクチン接種
- 診察で接種に問題がないと判断されれば、医師または看護師が鼻腔内にワクチンを投与いたします。
- 痛みはほとんどなく、鼻にスプレーを「シュッ」と吸い込むような形ですので、ご安心ください。
- 数秒で接種が完了します。
- 接種後の説明
- ワクチン接種後は、安全のためにしばらく院内で待機していただきます。
- 体調に変化がないか、医師や看護師が確認いたします。
- もし接種後に気になる症状が出た場合は、すぐに当院へご相談ください。
フルミストのメリット・効果と注意すべき副反応
フルミストには、従来の注射型ワクチンでは得られない多くのメリットがあります。
- 注射の痛みがありません
- 針を使わないため、注射の痛みが全くありません。
- 注射が苦手なお子さんや大人の方にとって、インフルエンザ予防接種のハードルを大きく下げることができます。
- 鼻にスプレーするだけなので、恐怖心を感じることなく接種が可能です。
- 自然感染に近い免疫反応を誘導します
- 生ワクチンであるフルミストは、鼻の粘膜で増殖することで、より自然な形で免疫を誘導します。
- この免疫は、インフルエンザウイルスが侵入する鼻やのどなどの粘膜にも作用します。
- ウイルスが体内に侵入する初期段階での防御力を高める効果が期待できます。
- 交差免疫効果も期待できます
- フルミストは、接種したウイルス型だけでなく、異なる型のインフルエンザウイルスに対しても防御する「交差免疫」という効果が期待される場合があります。
- これは、より幅広い種類のインフルエンザウイルスから身を守る可能性を示しています。
一方で、フルミストにも注意すべき副反応があります。生ワクチンである特性上、接種後に軽いインフルエンザのような症状が出ることがあります。
- 一般的な副反応
- 鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、頭痛、軽い発熱などが挙げられます。
- これらの症状は、体がインフルエンザに対する免疫を作り出す過程で起こるもので、通常は数日から一週間程度で自然に治まります。
- ほとんどの場合、症状は軽度で、日常生活に大きな支障をきたすことは少ないでしょう。
- 重い副反応の可能性
- アレルギー反応などの重い副反応が起こる可能性も、ゼロではありません。
- しかし、その発生は非常に稀です。
- もし接種後に、普段とは違う気になる症状や、重いアレルギーを疑う症状(全身のじんましん、呼吸困難など)が現れた場合は、すぐに当院にご連絡ください。
- 医師や看護師が状況を確認し、適切な対応をいたします。
接種できる年齢と受けられない方(禁忌)について
フルミストは、その安全性と効果を最大限に引き出すために、接種できる年齢と、接種をおすすめできない方が細かく定められています。接種を希望される方は、ご自身が対象となるかどうかを事前に確認することが大切です。
【接種できる年齢】 当院では、原則として2歳から18歳までの方がフルミストの接種対象となります。この年齢範囲は、ワクチンの効果と安全性に関する研究結果に基づいています。
- お子さんの場合
- 2歳以上であれば接種が可能です。
【受けられない方(禁忌)】 以下に該当する方は、フルミストの接種をおすすめできません。これは、ワクチンによる健康上のリスクを避けるため、またワクチンの効果が十分に発揮されない可能性があるためです。
- 2歳未満のお子さん、または19歳以上の方
- この年齢層では、フルミストの安全性や効果に関する十分なデータがない、あるいは特定の健康上のリスクが懸念されるためです。
- 喘息や重い慢性呼吸器疾患をお持ちの方
- 特に過去12ヶ月以内に喘息の急性増悪(発作が悪化したこと)があった方や、現在も喘息の治療を受けている方は、ワクチン接種により呼吸器症状が悪化する可能性があります。
- 重い心臓病、腎臓病、代謝性疾患(糖尿病など)、神経疾患などの基礎疾患をお持ちの方
- これらの疾患がある場合、ワクチン接種によって病状が悪化したり、重い副反応が出たりするリスクが高まる可能性があります。
- 免疫不全の方、または免疫抑制剤を使用している方
- 病気や治療によって体の免疫力が低下している方は、生ワクチンであるフルミストを接種すると、弱毒化されたウイルスであっても体内で増殖しすぎてしまうリスクがあるためです。
- 妊娠中の方
- 妊娠中の女性に対するフルミストの安全性に関するデータが十分ではないため、接種は推奨されません。
- 卵アレルギーや、ワクチンの成分(ゲンタマイシン、ゼラチンなど)に対して重いアレルギー反応の既往がある方
- これらの成分に対してアレルギー反応を起こしたことがある方は、再度重いアレルギー反応(アナフィラキシーなど)を起こす危険性があるため、接種できません。
- アスピリンを服用しているお子さん
- フルミスト接種後、アスピリンを服用すると「ライ症候群」という稀な病気のリスクが高まることが指摘されているため、接種できません。
- 現在、発熱しているなど、インフルエンザのような症状がある方
- 体調が優れない時にワクチンを接種すると、副反応が強く出たり、症状が悪化したりする可能性があるため、体調が回復してから接種する必要があります。
- これまでのインフルエンザワクチンで重いアレルギー反応があった方
- 他の種類のインフルエンザワクチンであっても、重いアレルギー反応があった場合は、フルミストでも同様の反応が出る可能性があるため、接種はできません。
また、過去4週間以内に麻疹、風疹、おたふくかぜなどの他の生ワクチンを接種した方も、ワクチンの種類によっては接種時期を考慮する必要があります。フルミストの接種をご希望される際は、問診票に正確な情報を記入し、現在の健康状態、これまでの病歴、服用中のお薬について、診察時に医師へ詳しくお伝えください。これにより、医師が安全に接種が可能かを判断し、安心してワクチンを受けていただけます。