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便秘薬あれこれ

[2022.09.03]

わだ内科・胃と腸クリニックの和田蔵人(わだ くらと)です。

本日は便秘薬についてお話させていただければと思います。

なお便秘の説明についてはクリニックのホームページに説明を書いていますので、お時間のある方はぜひご確認されてください。

さて本題に入りますが、便秘薬といっても数多くの種類があり、効果や作用は様々です。そのため患者さんの症状に応じてそれぞれ処方させていただいており、以下が現在クリニックや病院で主に処方されている便秘薬です。

今回はそれぞれ簡単に解説させていただきます。

*薬の作用の部分は専門的な用語も出てきますので、読み飛ばしていただいても結構です。

①酸化マグネシウム 

1錠5.7円と非常に安く、内服していただく量を調節しやすく、便秘治療の第一選択薬です。

作用としては、胃の中の消化酵素である胃酸と反応し小腸で炭酸マグネシウムに変化し、浸透圧(2つの濃度が違う水が隣り合わせの時に、濃度を一定に保とうとして水分が移動すること)によって腸の中へ水分を引き込んで、便の容積を増大させます。

ただし腎機能障害のある患者さんにおいては、高マグネシウム血症(症状として倦怠感や嘔吐、口が乾く、不整脈の出現などがあります)を起こすことがあり注意が必要とされています。

②刺激性下剤 

刺激性下剤にはセンノシドとピコスルファートという薬があります。

センノシド

強力な排便作用を持ち、他の薬が効果がない場合の頓用で使用することが多いです。

ただし長期間内服することで薬に耐性を生じることがあり、短期間の投与が推奨されています。

作用としては、大腸粘膜の筋層間神経叢(消化管の内側の輪走筋と外側の縦走筋の2つの筋肉の層の間に分布する神経細胞の小集団)を刺激し、腸管の収縮を誘導することで排便を促しています。また大腸の粘膜を黒色に変化させる、大腸メラノーシスの原因となりますが病的意義はありません。

ピコスルファート

作用としては、大腸内の腸内細菌由来の酵素に加水分解(化合物が水と反応することによって起こる分解反応)されできた活性体が、腸管蠕動を引き起こし排便を促しています。大腸内視鏡検査の前処置としても使用されています。

③分泌型下剤 

分泌型下剤にはアミティーザ、リンゼスという薬があります。

アミティーザ

高齢の方で難治性の便秘の方に推奨されている薬です。

個人差はありますが、吐き気や嘔吐の副作用が多い(特に女性に多い)ことが知られています。また妊娠している方には禁忌です。

作用しては小腸のクロライドイオンチャンネルに作用し、腸管内の水分の分泌を増加させ、便を柔らかくして自然な排便を促します。

リンゼス

腹痛が強い慢性便秘症の方や便秘型の過敏性腸症候群の方に推奨されています。

副作用としては下痢の頻度が高く、減量または少量より開始することもあります。

作用としては、腸粘膜のグアニル酸シクラーゼに作用し、サイクリックGMPを増加させ、腸管内への水分の分泌を増大させます。

④浸透圧性下剤 

浸透圧性下剤には、ラクツロース、モビコールという薬があります。

ラクツロース

甘い味で乳幼児にも飲みやすい薬です。

作用としては、小腸で分解吸収されることなく大腸に到達し、浸透圧により水分を腸管内に保持し排便を促します。

便秘の治療以外にも肝硬変の患者さんに発症する肝性脳症においても使用さます。

モビコール

2歳以上の小児に使用することができる薬で、ジュースやスープで溶かすことも可能です。他の薬剤で改善が乏しい難治例に適しています。

作用としては、多量の水分を含むことが可能なハイドロゲルという物質を形成し、便の滑りの良さを改善させることで排便を促します。

⑤グーフィス

効果発現が非常に早い薬です。内服当初は腹痛の副作用を生じることもありますが、通常1-2週間で改善します。また良好な効果を得るためには食前に内服することが望ましいとされています。

作用としては、終末回腸(小腸の一番大腸側の部分です)の胆汁酸トランスポーターを阻害することで大腸への胆汁酸の流入量を増加させ、水分の分泌を増加し、蠕動運動を促進させることで排便を促します。

⑥漢方薬 

便秘の治療に用いられる漢方薬は大黄を含むもの、含まないものの大きく2つに分類されます。

大黄を含むものとして代表的なものとして、麻子仁丸という薬があり、コロコロとした固い便を柔らかくする効果があります。

また大黄を含まないものとして大建中湯という薬があり、腸管ガスが多く、腹部の膨満感を訴える患者さんに効果があります。また腸閉塞の再燃予防にも用いることが多いです。

 

以上専門用語も多く、分かりづらい部分もあったかもしれませんが、現在主に使用されている便秘薬について説明させていただきました。ただし今回説明した以外にも、注意点やポイントがございますので、まずはしっかり診察させていただき、皆さまそれぞれに合った便秘薬を提案していければと思います。

また慢性便秘の方は時に大腸がんの可能性もあるため、一度大腸カメラ検査も提案させていただくこともございます。

 

 

 

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