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ピロリ菌の治療中にコーヒーを飲んでもよいですか?

[2024.10.05]

大分県大分市のわだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

ピロリ菌の除菌治療中は、食事制限など、日常生活で気を付けなければならないことがいくつかあります。大好きなコーヒーも、控えた方がいいのかどうか、気になる方もいるのではないでしょうか? 今回は、除菌治療中のコーヒーの影響について、詳しく解説していきます。

除菌治療の基本とコーヒーの役割

ピロリ菌の除菌治療は、胃の中に住み着いたピロリ菌を退治し、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、そして胃がんのリスクを減らすための重要な治療です。除菌治療では、通常、胃酸を抑える薬と、ピロリ菌を攻撃する抗生物質を組み合わせて服用します。

この治療を成功させるためには、いくつか注意点があります。その一つが、胃酸のコントロールです。

コーヒーに含まれるカフェインには、胃酸の分泌を促す作用があります。そのため、空腹時にコーヒーを飲むと、胃酸が過剰に分泌され、胃の粘膜を傷つけてしまう可能性があるのです。

ピロリ菌の除菌治療中は、薬の影響で胃の粘膜が普段よりデリケートになっているため、胃酸の影響を受けやすくなっています。ですから、コーヒーの摂取には注意が必要となります。

コーヒーによる除菌効果への影響

結論から申し上げますと、ピロリ菌の除菌治療中にコーヒーを飲むことが必ずしも禁止されているわけではありません。

実際、最近の研究では、レボフロキサシンベースの四重療法とビスマスベースの四重療法を比較した結果、ピロリ菌の除菌効果に大きな差は認められませんでした。このことから、除菌治療中にコーヒーを摂取しても、治療の成功率に直接的な悪影響を与えるとは言い切れないということが示唆されます。

ただし、コーヒーの過剰摂取は胃酸の分泌を過剰に促進し、胃の粘膜を傷つけ、治療中の症状を悪化させる可能性があります。

例えば、胃痛や胸焼けなどの症状が強く出てしまう可能性があります。また、胃の粘膜が傷つくことで、吐血や下血といった症状が出る可能性も否定できません。

医師が推奨するコーヒーの摂取方法

ピロリ菌の除菌治療中にコーヒーを飲む場合は、以下の点に注意するようにしてください。

  • 飲む量:多くても1日に1~2杯程度に抑えましょう。
  • 飲むタイミング:空腹時は避け、胃に負担がかかりにくい食後や午後などを選びましょう。
  • カフェインの量:カフェインが気になる場合は、デカフェ(カフェインレス)コーヒーを選びましょう。
  • 温度:熱すぎるコーヒーは胃に負担をかけるため、少し冷ましてから飲みましょう。

その他、医師から個別に指示があれば、それに従ってください。不安なことがあれば、遠慮なく医師に相談するようにしましょう。

除菌治療中の食事制限と注意点

ピロリ菌の除菌治療中は、お薬の効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるため、食事制限や生活習慣の改善が大切になります。

食事は、胃への負担を減らし、消化しやすいものを心がけましょう。特に、普段何気なく口にしているものが、実は胃に負担をかけていることがあります。

なるべく控えた方がよい食品リスト

ピロリ菌除菌治療中は、胃に負担をかけたり、炎症を悪化させたりする可能性のある食べ物を控えることが大切です。代表的な食品と、その理由、そして具体的な例を以下の表にまとめました。

食品群 理由 具体的な例
刺激物 胃粘膜を刺激し、炎症を悪化させる可能性があります。 唐辛子、香辛料、わさび、カレー、キムチ、コーヒー、炭酸飲料、柑橘系の果物やジュース<br>例えば、辛い食べ物は、胃の粘膜を攻撃し、炎症を引き起こす可能性があります。また、炭酸飲料は胃を膨張させ、圧迫感や不快感を引き起こすことがあります。
脂っこいもの 消化に時間がかかり、胃に負担をかけます。 天ぷら、揚げ物、ラーメン、脂身の多い肉、バター、生クリーム<br>脂っこい食べ物は、消化に時間がかかるため、胃酸が過剰に分泌されやすくなります。胃酸過多は、胃の粘膜を傷つけ、炎症を悪化させる可能性があります。
アルコール 胃酸の分泌を促進し、胃粘膜を傷つける可能性があります。 ビール、日本酒、ワイン、焼酎など、アルコール類全般。アルコールは、胃酸の分泌を促進するだけでなく、胃の粘膜を直接傷つける作用もあります。
カフェインを含むもの 胃酸の分泌を促進し、胃の不快感を引き起こす可能性があります。 コーヒー、紅茶、緑茶、コーラ、栄養ドリンク。カフェインは、胃酸の分泌を促進し、胃の運動を活発にするため、胃痛や胸やけなどの症状を引き起こす可能性があります。治療中は、カフェインの摂取量を控えることが望ましいです。

これらの食品を摂取することで、胃の不快感を強く感じたり、治療の効果が十分に得られなかったりする可能性があります。治療中は、これらの食品をできるだけ控えるように心がけ、胃に優しい食事を心がけましょう。

 

除菌治療成功率を高めるためのポイント

ピロリ菌の除菌治療は、胃薬と抗生物質を一定期間服用することで、胃の中に棲みついているピロリ菌を退治する治療法です。除菌治療が成功すれば、ピロリ菌によって引き起こされる胃潰瘍や十二指腸潰瘍、慢性胃炎、そして胃がんのリスクを大幅に減らすことができます。

しかし、除菌治療は、ただ薬を飲めば良いというわけではありません。薬の効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるためには、患者さん自身の心がけが重要になります。治療を成功させるためのポイントを押さえ、一緒にピロリ菌とサヨナラしましょう!

コーヒーを含む食生活の工夫

ピロリ菌の除菌治療中は、胃酸の分泌をコントロールすることが重要です。コーヒーに含まれるカフェインは、胃酸の分泌を増加させる作用があるため、摂取には注意が必要です。

コーヒーを飲むと、胃酸が活発に分泌され始めます。少量であれば問題ありませんが、過剰に摂取すると、胃の粘膜を攻撃し、炎症を引き起こす可能性があります。これは、ピロリ菌除菌治療中で胃の粘膜がデリケートになっている状態では、さらに注意が必要です。

「先生、コーヒーは絶対にダメなのですか?」と心配される患者さんもいらっしゃいますが、安心してください。完全に禁止ではありません。

しかし、これはあくまで統計的な結果であり、個人差もあります。コーヒーを飲み過ぎると、胃痛や胸焼けといった症状が出る可能性もゼロではありません。

特に、空腹時にコーヒーを飲むことは避け、1日に1~2杯程度に抑え、食後や午後など、胃に負担がかかりにくい時間帯に飲むように心がけましょう。カフェインが気になる方は、デカフェを選ぶのも良いでしょう。

副作用を抑えるための生活習慣

ピロリ菌の除菌治療では、薬の効果を最大限に引き出すだけでなく、副作用を最小限に抑えることも大切です。処方された薬は、必ず医師の指示通りに服用してください。自己判断で服用を中止したり、量を変更したりすることは大変危険です。

治療中に下痢や軟便、吐き気、味覚異常といった副作用が現れることがあります。これらの症状は、多くの場合、一時的なものですが、不安な場合は自己判断せず、必ず医師に相談してください。

日常生活では、規則正しい生活習慣を心がけ、十分な睡眠をとり、ストレスを溜め込まないようにしましょう。バランスの取れた食事を心がけ、胃腸に負担をかけないようにすることも大切です。

除菌治療後のケアとサポート方法

ピロリ菌の除菌治療が成功したかどうかは、治療終了後約2か月後に、尿素呼気試験などを行います。検査の結果、除菌が確認された後も、油断は禁物です。

除菌治療後も、定期的な健康診断を受けることは非常に重要です。胃の健康状態を継続的に把握することで、胃がんの早期発見・早期治療に繋がります。

当クリニックでは、ピロリ菌除菌治療に関する不安や疑問に寄り添い、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供しています。何か気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。

まとめ

ピロリ菌の除菌治療中は、コーヒーを飲むことは禁止されていませんが、過剰摂取は胃への負担となり、治療中の症状が悪化する可能性があります。

コーヒーを飲む場合は、1日に1~2杯程度に抑え、食後や午後など、胃に負担のかかりにくい時間帯に飲むようにしましょう。カフェインが気になる場合は、デカフェコーヒーを選びましょう。

また、食事制限など、治療中は胃に優しい生活を心がけることが大切です。不安な場合は、医師に相談するようにしましょう。

参考文献

  • Liou JM, Jiang XT, Chen CC, Luo JC, Bair MJ, Chen PY, Chou CK, Fang YJ, Chen MJ, Chen CC, Lee JY, Yang TH, Yu CC, Kuo CC, Chiu MC, Chen CY, Shun CT, Hu WH, Tsai MH, Hsu YC, Tseng CH, Chang CY, Lin JT, El-Omar EM, Wu MS and Taiwan Gastrointestinal Disease and Helicobacter Consortium. Second-line levofloxacin-based quadruple therapy versus bismuth-based quadruple therapy for Helicobacter pylori eradication and long-term changes to the gut microbiota and antibiotic resistome: a multicentre, open-label, randomised controlled trial. The lancet. Gastroenterology & hepatology 8, no. 3 (2023): 228-241.
 
 

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