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胃の痛み(胃炎)とストレスの関係は?

[2024.10.09]

大分県大分市のわだ内科・胃と腸クリニック院長の和田蔵人(わだ くらと)です。

「ストレスで胃が痛い…」と感じたことはありませんか?実は、ストレスは胃炎と深い関係があり、現代人の多くが抱える悩みとなっています。2023年の調査によると、胃炎の患者のうち、ストレスが原因とされるケースは全体の7割を超えています。ストレスが胃に与える影響は、胃酸の分泌増加や胃粘膜の保護機能低下など、様々なメカニズムによって起こります。この記事では、ストレスと胃炎の関係、そして具体的な対策について解説します。ストレスに悩まされがちな現代社会において、胃の健康を守るために役立つ情報が満載です。ぜひ最後まで読んで、ストレスから解放されるためのヒントを見つけてください。

胃炎とストレスの関係;影響を与える主な要因3つ

現代社会において、ストレスは避けて通れないものです。仕事や人間関係、将来への不安など、さまざまなストレスにさらされる中で、胃の痛みや不快感に悩まされる方も少なくありません。「ストレスのせいで胃が痛い」と感じた経験、皆さんにもありませんか? これは決して気のせいではなく、ストレスと胃炎には深い関係があるのです。

今回は、ストレスが胃に与える影響について、消化器内科専門医の視点からわかりやすく解説していきます。

ストレスが胃炎を悪化させるメカニズム

ストレスを感じると、私たちの体は危険を察知し、戦闘態勢に入ります。この時、自律神経のうち交感神経が優位になり、心拍数が上がり、血管が収縮し、アドレナリンなどのホルモンが分泌されます。

このような状態が続くと、体は疲弊し、胃腸などの消化器官の働きは抑制されます。なぜなら、体は消化よりも、目の前の危機から逃れることを優先するからです。

具体的なメカニズムとして、ストレスは以下のような形で胃炎を悪化させます。

  1. 胃酸過多: ストレスホルモンは胃酸の分泌を促進します。通常、胃酸は食べたものを消化するために必要ですが、過剰になると胃の粘膜を傷つけ、胃炎を引き起こしたり、悪化させたりします。
  2. 胃粘膜の防御機能低下: ストレスは胃粘膜の血流を悪くし、粘液の分泌を減少させます。胃粘膜は、胃酸や食べ物の刺激から胃を守るバリア機能を持っていますが、ストレスによってこの機能が低下すると、胃はダメージを受けやすくなってしまうのです。
  3. 胃の運動機能低下: ストレスは胃の動きを悪くし、消化不良や胃もたれを引き起こします。消化が遅くなると、胃酸が長時間胃にとどまり、胃粘膜を傷つけるリスクが高まります。
  4. ピロリ菌の活性化: ストレスは、胃がんのリスク因子として知られるピロリ菌の増殖を促進する可能性も指摘されています。ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍の原因となるため、ストレスによる影響は無視できません。

これらのメカニズムが複雑に絡み合い、ストレスは胃炎を悪化させるのです。

感情的ストレスと生理的反応の関連性

ストレスには、精神的なものだけでなく、肉体的なものも含まれます。

  • 精神的ストレス: 仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、将来への不安、過剰な責任感、大切な人を亡くした悲しみなど、心に負担をかける出来事はすべてストレスとなります。
  • 肉体的ストレス: 過労、睡眠不足、不規則な生活、夜勤、長時間のデスクワーク、騒音、暑さ寒さ、痛み、病気、手術、ケガなど、体に負担をかけるものもストレスになります。

これらのストレスは単独で作用するだけでなく、互いに影響し合って、より深刻な状態を引き起こすこともあります。例えば、仕事のプレッシャー(精神的ストレス)から睡眠不足(肉体的ストレス)になり、胃炎が悪化してしまう、といったケースです。

ストレスに対する感じ方は人それぞれです。同じような状況でも、ストレスを強く感じる人もいれば、あまり感じない人もいます。一般的に、ストレスを強く感じやすい人は、胃炎になりやすい傾向があると言われています。

日常生活でのストレス管理の重要性

ストレスを完全に無くすことは難しいですが、ストレスと上手に向き合い、コントロールしていくことが大切です。ストレスを軽減するために、以下のような方法を試してみてはいかがでしょうか。ストレスを管理することは、胃炎の予防・改善だけでなく、健康な毎日を送る上でも非常に大切です。

  • 十分な睡眠をとる: 睡眠不足はストレスホルモンの分泌を増加させ、胃酸過多や胃粘膜の防御機能低下を引き起こしやすくなります。質の高い睡眠を十分に確保することで、ストレスを軽減し、胃の健康を守りましょう。
  • バランスの取れた食事を摂る: 暴飲暴食や刺激の強い食事は、胃腸に大きな負担をかけます。消化の良いものをバランスよく食べ、胃腸を労わりましょう。また、ストレスを感じると甘いものが食べたくなるかもしれませんが、摂りすぎると胃酸の分泌を過剰に促進する可能性があるので注意が必要です。
  • 適度な運動をする: 軽い運動はストレス解消効果だけでなく、胃腸の働きを活発にする効果も期待できます。ウォーキングやヨガなど、無理のない運動を習慣化してみましょう。
  • 趣味を楽しむ: 好きなことに没頭することで、ストレスを忘れ、心身のリフレッシュができます。
  • リラックスできる時間を作る: ゆっくりとお風呂に入ったり、好きな音楽を聴いたり、アロマを焚いたり、自然と触れ合ったり、自分なりのリフレッシュ方法を見つけましょう。腹式呼吸も効果的です。
  • 自分一人で抱え込みすぎない: ストレスや悩みを一人で抱え込みすぎず、家族や友人などに相談したり、専門機関に相談するのも良いでしょう。信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になることがあります。

胃炎の主な症状;見落としがちな4つ

胃炎は、自覚症状がない軽度のものから、強い痛みや吐き気を伴うものまで、その症状はさまざまです。

よくある症状に気づかず、放置してしまうケースも多いため注意が必要です。

早期発見・早期治療のためにも、胃炎で現れやすい主な症状をきちんと知っておきましょう。

腹部の痛みや不快感

胃炎の代表的な症状として、腹部の痛みや不快感が挙げられます。

みぞおちのあたりが、キリキリと痛んだり、シクシクと痛んだり、あるいは、胃が重苦しい、張った感じがするなど、痛みの種類や程度は人それぞれです。

「胃が痛い」と一言で言っても、その感じ方は人それぞれで、症状を医師に伝えるのは難しいものです。

当クリニックを受診される患者さんの中には、「胃が締め付けられるような痛み」「胃が焼けるような痛み」と表現される方もいらっしゃいます。

痛みの原因も、胃酸、食べ物、胃の運動などさまざまです。

例えば、食後に胃が痛くなる場合は、食べ物が胃の粘膜を刺激することで痛みが起こっている可能性があります。

また、空腹時に胃が痛む場合は、胃酸が過剰に分泌されていることが原因として考えられます。

痛みの強さや痛むタイミングは、胃炎の原因や重症度によって異なります。

自己判断せずに、医療機関を受診するようにしましょう。

食欲不振と体重減少

胃炎になると、胃の粘膜に炎症が起こり、胃の働きが低下します。

そのため、食欲がなくなったり、食事の量が減ったりすることがあります。

また、胃がムカムカしたり、吐き気がするといった症状が現れることもあります。

食事が十分に摂れなくなると、栄養不足に陥り、体重が減少することがあります。

特に、高齢者の場合は、体重減少によって体力が低下し、他の病気にかかりやすくなるリスクもありますので、注意が必要です。

食欲は、本来、体が健康な状態を保つために必要な栄養を、自然と摂取しようと促すための大切なサインです。

しかし、胃炎によってこのサインが見逃されてしまうと、知らず知らずのうちに栄養不足を引き起こし、健康を損なう危険性があります。

胸やけや悪心の原因とは

胸やけや悪心も、胃炎でよく見られる症状です。

胸やけは、胃酸が逆流して、食道が刺激されることで起こります。

熱いものがこみ上げてくるような感覚や、胸のあたりがチリチリと焼けるような感覚を覚えます。

悪心は、吐き気を伴うこともあります。

胃炎によって胃の動きが悪くなると、食べたものがスムーズに消化されずに胃に停滞し、吐き気を引き起こすと考えられています。

胃の内容物が逆流することで起こる胸やけは、胃酸の分泌が過剰になっている、あるいは胃の内容物が逆流しやすい状態になっていることを示唆しています。

慢性的な疲労感とその影響

胃炎が続くと、慢性的な疲労感や倦怠感を感じることがあります。

これは、胃の不調によって、睡眠の質が低下したり、栄養の吸収が悪くなったりすることが原因と考えられています。

疲労感が続くと、集中力や思考力の低下にもつながり、日常生活や仕事に支障をきたす可能性もあります。

また、精神的なストレスを感じやすくなったり、うつ病などの心の病気を発症するリスクも高まります。

疲労感は、体が発する「休息が必要」というサインです。

しかし、胃炎によってこのサインが隠されてしまうと、体は慢性的な疲労状態に陥り、様々な悪影響を及ぼす可能性があります。

胃炎の診断方法と治療の選択肢;知っておくべきこと3つ

胃の痛みや不快感は、日常生活に大きな影を落とします。胃炎と診断された場合、一体どのような検査や治療が行われるのか、不安に感じる方もいるかもしれません。ここでは、胃炎の診断から治療法まで、知っておくべき基本的な情報をわかりやすく解説します。

胃カメラ(内視鏡検査)の流れと注意点

胃炎の診断には、胃カメラ(内視鏡検査)が有効です。口や鼻から細い管を入れることに抵抗がある方もいるかもしれませんが、検査自体は5分ほどで終わりますし、当院ではは鎮静剤を使用することで、楽に検査を受けられるようになっています。

検査の流れとしては、喉や鼻の麻酔を行った上で横になっていただき、口やから内視鏡を挿入します。この時、喉の奥に異物感を感じることがありますが、えずいてしまうほどではありません。

内視鏡の先端にはカメラが付いており、モニターに胃の中の映像が映し出されます。医師は、この映像を見ながら、炎症の程度や範囲などを確認します。胃炎の場合、胃の粘膜が赤く腫れていたり、出血していたりするのが観察されます。

内視鏡検査は、胃炎だけでなく、胃潰瘍や胃がんなどの早期発見にも非常に役立ちます。そのため、定期的な検査を受けることをおすすめします。

薬物療法の種類と効果

胃炎の治療には、その原因や症状に合わせて、様々な種類の薬が処方されます。代表的なものとしては、胃酸の分泌を抑える薬、胃の粘膜を保護する薬、胃の動きを調整する薬などがあります。

胃酸の分泌を抑える薬は、胃酸の分泌を抑えることで、炎症を起こしている胃の粘膜を保護する効果があります。プロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬などがあり、症状に合わせて医師が適切な薬を選択していきます。市販薬として販売されているものもあり、胃痛や胸やけなどの症状を和らげる効果があります。

胃の粘膜を保護する薬は、胃の粘膜を保護することで、炎症の悪化を防ぎます。胃粘膜保護剤と呼ばれる薬剤が用いられ、胃の表面を覆って物理的に保護する作用や、胃粘膜の修復を促進する作用などがあります。

胃の動きを調整する薬は、胃の動きを調整することで、吐き気や嘔吐などの症状を和らげます。消化管運動調節薬と呼ばれる薬剤が用いられ、胃の内容物の排出を促進したり、胃のけいれんを抑えたりする効果があります。

これらの薬は、医師の指示に従って、適切な量と期間、服用する必要があります。自己判断で服用を中止したり、量を変更したりすると、症状が悪化したり、副作用が出やすくなる可能性がありますので、注意が必要です。

食事療法や生活習慣改善の重要性

胃炎の治療や予防には、薬物療法に加えて、食事療法や生活習慣の改善も非常に重要です。胃酸の分泌を過剰に促したり、胃粘膜に負担をかけたりするような食事は避け、胃に優しい食生活を心がけましょう。

暴飲暴食を避け、規則正しくバランスの取れた食事を心がけることが大切です。刺激物や脂肪分の多い食事、アルコール、カフェイン、香辛料などは胃に負担をかけるため控えるようにしましょう。また、よく噛んで食べることや、食事はゆっくりと時間をかけて食べることも大切です。

ストレスは胃炎の悪化要因となるため、ストレスを溜め込まないように、自分に合ったストレス解消法を見つけるようにしましょう。十分な睡眠をとり、適度な運動を心がけることも効果的です。禁煙も、胃炎の改善に効果が期待できます。

胃炎は、適切な治療と生活習慣の改善によって、多くは改善する病気です。日頃から胃の健康に気を配り、症状が現れた場合には、自己判断せずに医療機関を受診するようにしましょう。

当院の胃カメラ検査の流れについてはこちらをご参照ください

また胃カメラ検査は電話だけでなく、ネット予約も可能ですのでお気軽にご相談ください。

まとめ

ストレスは胃炎を悪化させる要因の一つです。仕事や人間関係など様々なストレスにさらされる現代社会では、胃の不調を感じている人も多いでしょう。

ストレスは交感神経を優位にし、胃酸の分泌を促進したり、胃粘膜の防御機能を低下させたり、胃の運動機能を悪くしたりします。また、ピロリ菌の活性化にも繋がることがあります。

ストレスを軽減するために、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、趣味を楽しむなど、自分にとって効果的な方法を見つけることが大切です。

胃炎の症状には、腹部の痛み、食欲不振、胸やけ、疲労感などがあります。これらの症状を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。

胃炎の診断には、胃カメラ検査が有効です。治療法としては、薬物療法、食事療法、生活習慣改善などがあります。

胃炎は適切な治療と生活習慣の改善によって改善できる病気です。日頃から胃の健康に気を配り、早期発見・早期治療を心がけましょう。

参考文献

  • Moody FG, Cheung LY. Stress ulcers: their pathogenesis, diagnosis, and treatment. The Surgical clinics of North America 56, no. 6 (1976): 1469-78.
 
 

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